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人魚の眠る家  (ねこ3.8匹)

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「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。そう約束していた播磨和昌と薫子に突然の悲報が届く。娘がプールで溺れた―。病院で彼等を待っていたのは、“おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた二人だったが、娘との別れの直前に翻意。医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に周囲は翻弄されていく。(裏表紙引用)

 



東野さんの文庫新刊。

 

今回のテーマは脳死に深く切り込んだ内容となっている。子どもが脳死の疑いになった場合、遺族が臓器提供に同意しなければ脳死判定はしない、心臓死をもって死とするなど、深く考えたこともなければ知らなかった事実。日本ではドナーが少ないということは薄々感覚として知っていたが、子どもの海外手術になぜそこまでお金がかかるのか、ということにも触れているので勉強になる。しかし2億6千万て。。。なぜそんな金額になるのかはだいたい分かったが、それにしてもあまりに…だろう。


6歳の娘がある日突然プールで溺れ脳死状態になり、現実を受け入れられない薫子は夫やその部下の協力を得て娘を生かし続ける。二度と目が覚めることはないのに、最新の技術で娘の筋肉を動かし成長を促す。そんな薫子の姿に夫や家族は恐怖し、というのがだいたいの流れ。

 

薫子の言動は恐ろしい。ほとんどホラー。筋肉を動かすまでは理解できても、さすがに表情筋を動かして笑顔にするというのは…自分だったら止めてほしい。息子もいるのだし、もう前を向いて生きて行って欲しいなと苦々しく思うのは他人事だからだろうか。なーんか同情できないのって、この物語に出てくる大人がどいつもこいつも浮気や不倫をし(かけ)ているんだよねえ。なんで東野作品に出てくる人って営業や医者にいちいち異性を意識するの?夫の部下の星野が2児の母で子どもが脳死になったばかりの薫子に好意を持つとか本気で気持ち悪いんだけど。しかも彼女持ち。薫子も、男女の関係になりかけている医師といちいちケジメで会う必要ある?こんな状況に遭ったらこんなもん自然消滅で良くない?

 

と、テーマ自体はとても良いし面白かったし「傑作」でいいのだと思うが…。登場人物の言動に違和感がありすぎて思い入れを持てなかったな。