すべてが猫になる

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時をかけるゆとり  (ねこ4.2匹)

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朝井リョウ著。文春文庫。

 

就活生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。この初エッセイ集では、天与の観察眼を駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』改題。(裏表紙引用)

 

 

朝井リョウさんのエッセイは面白いという噂を聞いて。

 

確かに、これは……小説より面白い。作家というものは基本的に内向的なイメージがあるが、この朝井リョウさんはどこに出しても恥ずかしくないリア充。友だちはたくさんいるし、大学のイベントにも積極的に参加するし(その内容が女子大生のダイエット企画撮影1日バージョンであっても)、大勢で旅行は行くし(目的地には着かなくても)、友人と京都へ自転車旅行なんてものに挑戦するし(痔になろうとも、下痢で知らない家のトイレを借り一家の団欒をぶち壊そうとも)。しかも作家となり映画化されようとも普通に就職する普通の感覚の持ち主(履歴書に特技は耳を動かせると書こうとも)。

 

ほんとに、なぜ作家になったの?とお聞きしたいぐらい「今時の若者」の姿がお調子者っぽい筆致でおかしく描かれていて、面白いやつが文才を持ったらこんなに面白くなるのかと驚く。知性とは眉間に皺を寄せて絞り出すものだけではない。ゆとり世代であろうとリア充であろうとそこから滲み出るものだ。

 

エッセイからこの作家さんに入るのもアリ。大アリ。