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我が心の底の光  (ねこ3匹)

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母は死に、父は人を殺した―。五歳で伯父夫婦に引き取られた峰岸晄は、中華料理店を手伝いながら豊かさとは無縁の少年時代を過ごしていた。心に鍵をかけ、他者との接触を拒み続ける晄を待ち受けていたのは、学校での陰湿ないじめ。だが唯一、同級生の木下怜菜だけは救いの手を差し伸べようとする。数年後、社会に出た晄は、まったき孤独の中で遂にある計画を実行へと移していく。生きることに強い執着を抱きながらも、普通の人生を捨てた晄。その真っ暗な心の底に差す一筋の光とは!?衝撃のラストが心を抉る傑作長編。 
(裏表紙引用)

 


こ、これはキツイ…

 

内容は犯罪小説×社会派という感じで、幼い頃母に軟禁され餓死しかけた上、目の前で父が母を殴り殺すという体験をした主人公の峰岸晄の半生を描いた物語。最初はイジメを甘んじて受け、怖いからではないと達観したような口を利く晄にまるでいい印象はなかった。いくら辛い過去があったからって、万引きや詐欺という悪事にまるで抵抗を抱かないのってやはり普通の感覚ではないなと。

 

しかしその印象は作品の途中から覆った。晄の体験してきた過去は、本当に身をえぐられるような我々には想像もつかない過激なものだったから。幼馴染の怜菜や従兄弟の慎司に対する態度を見ると、根っからの悪人ではなさそうだなあと思いつつ。なのに25歳の時に出会った日野との友情がああなるなんて…やはり心の底の闇は相当深い。

 

貫井さんの作品であることを考えるとこれも相当挑戦している作品だと思うが…。気分的にコレは完全にアウトだった。確かに衝撃の結末ではあったし、放り投げているわけでもなかった。うーん、でもねえ、貫井作品にありがちな、「………で?」の系統だった。問題提起はしているけれど響いて来ないというか。。かと行ってドス黒さに徹底している感じでもない。こういう技巧的なもの、新しいものを表現していくスタイルにそっちの要素が加われば鬼に金棒だと思うのだが…。

 

まあ、貫井さんとしてはこういう評価不本意だろうね。