すべてが猫になる

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羊と鋼の森  (ねこ4.2匹)

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宮下奈都著。文春文庫。

 

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。(裏表紙引用)

 


初読み作家さん。本屋大賞だっけ?普段それだけじゃ手を出さないのだけど、ピアノの調律師が主人公というのと(少しピアノやってたので)読んだ人がことごとく高評価だったので読んでみた。

 

結論から言うとこれは文句なしに面白かった。特別派手な展開があるでもないが、調律師の仕事というものを説明するのにこの作品に優るものはないと思う。音楽好きの端くれとしても、音楽は楽しんだもの勝ち、音楽はそれを好きな人のためにあるという主張にひどく共感した。うまく言えないが、絵であれ音楽であれ小説であれ、人それぞれ魂が震えるものというものは違って、たとえそれが他人から見てどうであれ「自分に必要なもの」だと言い切ればいいのだと教えられた。

 

そしてピアノの世界というものも奥深いものなのだなと思った。どんな素晴らしい調律をしても、弾く人に技術がなければ無駄なのだというのもわかるし、技術云々じゃなくその人の人生を弾くことで輝く音色もある。ピアノという楽器だけは調律が決めた音で弾くしかないのだなということも。

 

主人公の外村くんと彼を取り巻く調律師の面々との関係性も良かったし、お客さんであるふたご姉妹への外村くんの想いもひたむきで純粋で良かった。恋愛関係にならないのが意外だったけど(今後なるのかな~)。若い人が決意する瞬間に立ち会えるのは感動的だね。