すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

キャロリング  (ねこ3.9匹)

イメージ 1

 

クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーの社員・大和俊介。同僚で元恋人の柊子に秘かな思いを残していた。そんな二人を頼ってきたのは、会社に併設された学童に通う小学生の航平。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねることに――。逆境でもたらされる、ささやかな奇跡の連鎖を描く感動の物語。(裏表紙引用)

 

 

有川さんの文庫新刊。クリスマス向けの本だったけどまあいいや。

 

本書は、いい両親に恵まれず大人になった青年・大和と、両親の離婚の危機に心を痛める少年・航平の物語。航平は、大和が勤める小さな子供服メーカーで併設している学童に通っている。大和は元カノ・柊子を巻き込んで、航平の奮闘に力を貸すことになるのだが、というお話。

 

最初はぬくぬく育って曲がったことを知らない柊子のキャラクターが凄くイヤだったのだが、大和の悲惨な過去を知るにつけどんどん心の辞書が広がっていくのを読んでそんな気持ちは消え失せた。航平の父親の勤務先に現れる借金取りのヤクザについても「イマドキ職場に来て恫喝する借金取りなんかいるかぁ?」と思ってしまったが、このヤクザたちが実にキャラが立っていることが分かってからは読み方が変わった。ほとんどコメディ。。整骨院の常連・大嶽じいさんも時代劇口調が面白いし、ホロリと泣ける感動物語でありつつドタバタ系でもある。

 

有川さんらしくあたたかくて優しい、そして何より面白い作品だった。優しい人、誰かにとって大切な人という存在はとても大事だと思う。この人の前では言えないこと、出来ないことがあるかどうか。自分にとってのブレーキとなる人って必要かも。後半の誘拐劇はちょっとどうかと思ったが。こんなに緊迫感がない作風で銃とか出されてもハラハラのしようがない。でも航平の家庭がああなったことはリアルだと思った。冷たいかもしれんが、航平のその気持ちって子どものうちだけだからなあ。