すべてが猫になる

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皇帝と拳銃と  (ねこ3.9匹)

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私の誇りを傷つけるなど、万死に値する愚挙である。絶対に許してはいけない。学内で“皇帝”と称される稲見主任教授は、来年に副学長選挙を控え、恐喝者の排除を決意し実行に移す。犯行計画は完璧なはずだった。そう確信していた。あの男が現れるまでは。著者初の倒叙ミステリ・シリーズ、全四編を収録。“刑事コロンボ”の衣鉢を継ぐ警察官探偵が、またひとり誕生する。(紹介文引用)

 

 

倉知さんの新刊は、四篇収録の連作短篇集。「死神」ソックリの乙姫警部と超がつくイケメン鈴木刑事コンビのシリーズ。以前にも出てきたキャラクターらしいんだけどどこに出てた?

 

「運命の銀輪」
コンビ作家四季杜忍の片割れ・伊庭が相棒の和喜多を金槌で撲殺する。ちょっと証拠が薄弱かな?警察が本気で調べたらそりゃ証拠も出るだろうけど、そこに至るまでの堅いロジックが欲しかった。

 

「皇帝と拳銃と」
東央大学の稲見教授は、経理課職員に不正がバレ脅されるが、脅迫者を騙して殺害する。犯人のうっかり、というのはガッカリする要素の1つだな。皇帝=教授のプライドが悲しい。

 

「恋人たちの汀」
劇団演出家の想悟は、言い争いから悪徳金融家の叔父を短刀で刺殺してしまう。アリバイづくりを恋人であり女優の美凪に頼んだが――。これが一番面白かったかな。まあ1回死んだほうがいいような叔父だが、お金を借りてるんじゃ偉そうなこと言えないんじゃ?消臭スプレーが謎解きに絶対関わってくるなという出方だったので、納得いく出来。

 

「吊られた男と語らぬ女」
古ビルで発見された彫刻家の首吊り死体。犯人が太いロープから細いロープに取り替えた理由は?長身の男をどうやって意識のあるまま吊り殺せたのか、という部分がそのまんまだった。。動機が痛々しいけど、これって治らないんだろうか?
今までの3作品全てがこの作品への仕掛けだったのかも。


以上。読み物としての面白さがミステリとしての出来を上回ったかな。黒いスーツに黒いネクタイ、痩けた頬に無表情な瞳、尖った顎に立った耳って^^;どんだけ陰気なんだ。自分の美形に自覚のない鈴木刑事も意外とアツくていい。シリーズ化して欲しいけど、全て倒叙ミステリなのでなかなか難しいかなあ。