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うそつき、うそつき  (ねこ3.7匹)

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清水杜氏彦著。ハヤカワ文庫。

 

国民管理のために首輪型嘘発見器着用が義務付けられた世界。少年フラノは非合法の首輪除去で日銭を稼ぐ。強盗犯、痣のある少女、詐欺師など依頼人は様々で危険は日常茶飯事だ。だが彼にはある人のためにどうしても外したい首輪があった。それがフラノを首輪と彼自身の秘密へ導く……愛を乞う少年が辿り着く衝撃の結末とは? 小説推理新人賞とダブル受賞でデビューした超大型新人による第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。(裏表紙引用)

 

 

初読み作家さん。タイトルが面白いのと、アガサ・クリスティー賞ということの2点で挑戦してみた。SFかな?

 

文体は非常に平易で、ラノベっぽいかもしれない。ジュブナイルとまでは行かないかな?サクサク読めるのが良い。設定が複雑で奇妙なので、前半はこの特殊世界のルール、縛りの説明が大半を占めるのだがこれが全く退屈ではない。嘘のつくと赤く光る首輪の装着を国民が義務付けられているという設定はかなり無理があると思いがちだが、接客業の人はどうする?旅行する場合は?恋愛の駆け引きや、詐欺師はどうやる?という疑問は全てこの説明で氷解する。多少のツッコミどころがあるとしても、もうこういうのは勢いで突っ切ってしまえばいいと思うが。

 

主人公の少年フラノは正義感や倫理観を自身に求めているが、それがなかなか実行できていないのが目新しいのかも。首輪除去という、人の生死を操る仕事なので色々葛藤や疑問があるのだ。首輪の製造元が多数あることが物語のキモ。絶対外せないメーカー「レンゾレンゾ」の首輪がフラノを苦しめる。

 

果たしてうそつきは誰?仲介者?師匠?その謎が宙ぶらりんのままなのが残念だが、語り手自身が自覚のないうそつきなのでは、と思ったのは考え過ぎかな?全体的にどういうテーマでどういうお話なのかは語りづらいが、好みだったので他の作品も出たら読むと思う。