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刑事の約束  (ねこ3.7匹)

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薬丸岳著。講談社文庫。

 

万引き事件を起こした少年は、得体の知れない女とひっそり暮らす無戸籍児童だった。憐れむべき存在かと思えた少年はしかし、刑事・夏目の捜査で予想外の相貌をみせる(「無縁」)。割り切れない事情が、時にやりきれない犯罪を生む現代。絶望がしのび寄る乾いた世の中に、わずかな希望のありかを探る傑作短編集。 
(裏表紙引用)

 


夏目刑事シリーズ第3弾。

 

「無縁」
DVD販売店で起きた万引き事件は催涙スプレーによる暴行事件に発展していた。犯人の少年と暮らす女性と、謎の男との関係とは――。実際こういう子どもは現実にいるんだろうなと思う。夏目が気づいてあげられて良かった。中編だが、長編でもいけそうな内容。

 

不惑
ブライダル関係の仕事をしている窪田は、13年前に婚約者が事件に巻き込まれて植物状態になっていた。その犯人が新郎として目の前に現れ――。復讐は善か悪かというテーマかと思ったら、意外なところに話の展開が飛んで驚いた。これはこれで辛い。

 

「被疑者死亡」
シングルマザーの尚子は、逮捕状の出ていた元夫がトラックに撥ねられ死亡したことを知り―。ああいう人間がここまで変わるもんかしらね?ちょっと理想すぎるかな。

 

「終の住処」
老婆がケアマネージャーの男性を階段から突き落とす事件が発生した。老婆は認知症の疑いがあるが――。親の心が染みる。意地悪な見方かもしれないけど、どんな事情があれど人を突き落とすってところは「血は争えない」ってことなのかもと思った。

 

「刑事の約束」
空き地で見つかった、車の中の女性の刺殺体。拒食症の娘と、かつて夏目が関わった事件の少年の繋がりは――。
とにかく夏目の娘がああいうことになって光が見え始めたのが良かった。犯罪被害者の心の闇に切り込んだ作品。


以上。
ちょっと、犯罪者が更生しました話が多くてどうかなあと思うところもある。終の住処の人は別かもだけど。。再犯するとか反省してない云々じゃなくて、「変わりすぎ」っていうか。
でもそれぞれのお話は切り込み方が面白いし、やっぱり夏目刑事には短編集が似合うなと思った作品だった。