すべてが猫になる

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ノクターナル・アニマルズ/Tony and Susan  (ねこ3.7匹)

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オースティン・ライト著。吉野美恵子訳。ハヤカワ文庫。

 

主婦スーザンのもとに突然「夜の獣たち」と題された原稿が届く。それは離婚した夫エドワードが執筆した小説で、妻子を惨殺された大学教授の男が犯人たちを捜すという内容だった。彼はなぜこんな小説を書き、なぜ彼女に送りつけてきたのだろうか――?男女の心理を克明に追う巧みな文章と、企みに満ちた物語。ルース・レンデルやサラ・ウォーターズをはじめ巨匠作家たちが絶賛した傑作ミステリ。『ミステリ原稿』改題。

 

 

ミステリ原稿」という邦題は最低だな^^;。この小説を正確に言い表しているのは原題だと思うけど、日本じゃ「トムとスーザン」なんていうタイトルじゃ売れないもんね。

 

この小説は、離婚した夫エドワードから送り付けられた小説に、ヒロインのスーザンがだんだん取り込まれていくお話。ページのほとんどはエドワードの小説「夜の獣たち」で占められていて、ある幸せな一家が暴漢に襲われ妻子が誘拐の末惨殺されるという読んでいてなかなかにキツイ内容。しかし引き付ける魅力は確実にあって、スーザンは読み終わるのが惜しいと思うほどのめり込んでしまった。

 

「なぜ夫はこの原稿を元妻に送りつけて来たのか」に対する明確な答えはここにはない。推察するに、一番想像しやすい真実は夢見がちな夫と現実的な妻が分かり合えず、現在架空の幸せに溺れている元妻に対するエドワードの復讐だというものだろう。しかし、スーザンもエドワードも同じレベルの人間だと悟ったスーザンと、小説の登場人物トムはスーザンを投影したものだという答えは本質的には同じだろうか?それは最後まで私には分からなかった。


映画を先に観たのだが、映画で理解出来なかった部分が原作で理解出来た、ということはなかった。映画と違い詳しく心理を描いているので、ああこの時スーザンはこう思っていたのか、とかトムはこういう状態だったのか、というのが分かる。映画はアートに寄った作風だったのでそちらの要素はあまり期待してはいけないかな。