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鍵の掛かった男  (ねこ3.7匹)

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中之島のホテルで梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺と断定。だが同ホテルが定宿の作家・影浦浪子は疑問を持った。彼はスイートに5年住み周囲に愛され2億円預金があった。影浦は死の謎の解明を推理作家の有栖川有栖と友人の火村英生に依頼。が調査は難航。彼の人生は闇で鍵の掛かった状態だった。梨田とは誰か? 他殺なら犯人は? 驚愕の悲劇的結末! (裏表紙引用)

 

 

火村シリーズ文庫新刊。700ページの大長編。「あ、有栖川さん出てる~♬」と本屋で手に取った時、あまりの分厚さに一瞬戻しそうになった^^;まあ、読まないという選択肢はないのだけど。

 

アリスが大御所作家の影浦浪子から依頼されたのは、中之島にある銀星ホテルで自殺した梨田稔という男が自殺ではないことを暴いて欲しい、というものだった。正確に言うと、アリスではなく火村さんへの依頼なのだけど。影浦の話を聞いて興味を持ったアリスは、火村さんの協力を得ることに成功。銀星ホテルへ潜入し、関係者から話を聞き次々と梨田という男の秘密を明らかにしていくという話。

 

とても長いけどファンなら苦痛ではないと思う。火村さんの登場が少ないのが不満といえば不満だけど、その分アリスが活躍するのでそこは美味しいかも。ミステリ的にはとても丁寧で納得のいくものだし、1人の男の悲しくも数奇な人生を追うだけでもドラマティックで染みいった。こんなことで殺すの?と思わなくもないけれど、犯人のそういうネガティブな感情自体はあるだろうな、と思える。さすが有栖川さんと言うべき重みで、読み応えがあった。