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肉小説集  (ねこ3.6匹)

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坂木司著。角川文庫。

 

凡庸を嫌い「上品」を好むデザイナーの僕。何もかも自分と正反対な婚約者には、さらに強烈な父親がいて―。(「アメリカ人の王様」)サークルで憧れの先輩と部屋で2人きり。「やりたいなら面白い話をして」と言われた俺は、祖父直伝のホラ話の数々を必死で始めるが…。(「魚のヒレ」)不器用でままならない人生の瞬間を、肉の部位とそれぞれの料理で彩った、妙味あふれる傑作短篇集。(裏表紙引用)

 

 

坂木さんの文庫新刊。タイトル見て、これなんだろう?ジャンルが全く分からないと思いながら読む。

 

「武闘派の爪先」
ヤクザ業界に憧れ飛び込んだものの、挫折し沖縄に身を隠す男。男のプライドを捨てきれず自分を知らない土地でカッコつける姿が往生際悪くて笑えた。これはホラーなのかな。

 

アメリカ人の王様」
婚約者の家族(特に父親)ととことん食の好みが正反対、全てにおいてダサく下品に見えてしまう男は結婚自体を考え直すのか――。最初こんなに恋人と価値観が違って大丈夫なのかと思った。反対だからこそいい、ってよく聞くけど、ここは合ってなきゃしんどくない?タイトルの意味が判明して、可哀想だなあと思いつつもちと微笑ましい。

 

「君の好きなバラ」
物事全てに不満がある典型的な反抗期の中学生男子。道で出会った、母親とはまるで違う可愛いおばさんに憧れるが――。これ、見た目で家庭的で優しくてセンスがいいと思ってたら実は現実は全然違って、っていう展開なんだろうなと思ってたら本当にそうだった。こういうの嫌いじゃない。

 

「肩の荷(+9)」
40後半になり老化を感じる男。上司として常に自分を卑下してしまう男が痛々しかった。人間、ダメなところ1つ見せないで分かり合うのは不可能だと思う。この人はいい風に転がって良かったね。しかし上司、浮気で離婚して爽やかにリスタートとか言われても^^;

 

「魚のヒレ
入ったばかりのサークルで、惹かれていた女性の部屋に誘われた男。なんとか彼女と交際したくて面白い話を披露するが――。すいません、この男ちょっとキモチワルイ。。正直でいいのかな。

 

「ほんの一部」
ハムが大好きな小学五年生男子。通っている塾に入ってきた帰国子女が、いつもハムサンドを食べているのが気になって――。生ハム大好きだから、よだれが出てしまう話だった。しかし母親が料理ヘタとか不満を持っているとか「君の好きなバラ」とちょっと似てたなあ。食べるだけの奴は黙れと思う。ほのぼのした、小さなカップルのお話。血をなめたくだりは個人的にちょっと(;^ω^)。


以上。薄くてあっという間に読める。坂木さん特有の、大きく感情を揺さぶられるような系統のものではなかったがさすが読ませるという感じ。これはファンでも好き嫌い分かれるかなあ。