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その鏡は嘘をつく  (ねこ3.5匹)

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薬丸岳著。講談社文庫。

 

鏡ばかりの部屋で発見されたエリート医師の遺体。自殺とされたその死を、検事・志藤は他殺と疑う。その頃、東池袋署の刑事・夏目は同日現場近くで起こった不可解な集団暴行事件を調べていた。事件の鍵を握るのは未来を捨てた青年と予備校女性講師。人間の心の奥底に光を当てる、著者ならではの極上ミステリー。 
(裏表紙引用)

 


夏目シリーズ第2弾。

 

医師への夢に挫折した幹夫の失踪と、目撃されていた暴行事件はどう繋がるのか。そして京北医科大学外科医の須賀が、痴漢で逮捕されたあとに自殺した。須賀の自殺に不審感を抱いた検事の志藤は捜査を始める。2つの事件はどう絡みあう?――というお話。

 

幹夫の事件への関わりはなるほど納得のいくものだし、被害者須賀の人となりを知ると嫌悪感以上のものを感じた。しかし夏目刑事の良さがほとんど生かせていなかったのが残念。文面では夏目を称賛するような描写があるにはあるが、読者には伝わりにくかったと思う。薬丸さん得意の人間ドラマも書き込みの熱は感じるものの、どうにも薄く感じて感動しそこねた。エリート一家に生まれた苦悩や経済的な理由で進路を絶たれる悔しさは理解出来たが、○○ミスや○○入学などの社会問題の扱いが雑かなあ(そこがメインテーマではないものの)。事件の数も多いように思った。いつもの圧倒的な読ませる吸引力が弱かった。