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風ヶ丘五十円玉祭りの謎  (ねこ4匹)

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青崎有吾著。創元推理文庫

 

夏祭りにやって来た、裏染天馬と袴田柚乃たち風ヶ丘高の面々。たこ焼き、かき氷、水ヨーヨー、どの屋台で買い物しても、お釣りが五十円玉ばかりだったのはなぜ?学食や教室、放課後や夏休みを舞台に、不思議に満ちた学園生活と裏染兄妹の鮮やかな推理を描く全五編。『体育館の殺人』『水族館の殺人』に続き、“若き平成のエラリー・クイーン”が贈るシリーズ第三弾は、連作短編集。 (裏表紙引用)

 

 

裏染天馬シリーズ第3弾。初の短編集。

 

「もう一色選べる丼」
柚乃たち風ヶ丘高校の学食で、食器の返し忘れには今後一切の持ち出し禁止という決まりがあった。学食のおばさんが見つけた、返されない食器を置いた犯人探しに裏染が食券20枚に釣られ挑戦する。なんとも微笑ましい犯人だが、いいことではないね。1つ1つの論理が明快で気持ちいい。

 

「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」
兄の付き添いで風ヶ丘のお祭りに来た柚乃。なぜどこの屋台でもお釣りを五十円玉で返してくるのか――。「店の人に聞いたらいいだけやん」と思ったが、そこは作者もスキがない。聞いてもわからないっていうね。こういうことを思いつく神経にゾっとしたが割とほのぼの終わっている。1番ミステリ的に瞠目したお話ではあるが、こういう人物が言ったところでそこまでの影響力があるのかだけが疑問。

 

「針宮理恵子のサードインパクト
見た目が怖くてみんなに避けられている針宮理恵子には、女の子のような彼氏がいる。その彼氏が所属する吹奏楽部で、唯一の男子である彼氏がいじめられているようだが――。この真相には納得。しかし共学って若いっていいねえ。

 

「天使たちの残暑見舞い
柚乃と早苗が裏染に呼び出された先には、演劇部の梶原がいた。2人で抱き合えと言われたその意図とは――。ちょっと百合色強いので引きつつ。裏染の弱点がわかる貴重な回。

 

「その花瓶にご注意を」
裏染の妹、鏡華の学校で起きた、割れた花瓶事件。落ちる音がしなかったのはなぜか?鏡華の推理が冴える。この作品集内で1番イヤな犯人かもしれない。そりゃ鏡華もキレるわ。

 

「おまけ 世界一居心地の悪いサウナ」
裏染の家庭の秘密がすこ~し覗ける回。あんま深刻さがなかったってことは、それほど心配しなくてもいいのかな。しかし裏染よりキャラ立ってるなあ。

 

以上。
どの作品もミステリとしてキレが良く、秀逸。文章もキャラもいいし、正統派ミステリ作家ではこの人が現状トップだと思う。長編より読みやすく親しみやすいので、連作に走ったほうがもっと広く受け入れられるのではないかな。ちょっと百合要素が強すぎるので、そこだけなんとかならんかな。鏡華ちゃん好きだけどね。生々しいのはちょっと。。。