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豆の上で眠る  (ねこ3.7匹)

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小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。―お姉ちゃん、あなたは本物なの?辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。(裏表紙引用)

 

 

湊さんの文庫新刊。タイトルが意味深だが、「えんどうまめの上にねたおひめさま」という童話から来たもの。このお話を知らなかったのだが、ベッドにえんどうまめを置き、その上に何重にも羽根布団や枕を重ね、その上に寝ても豆の存在に気づくほど繊細であれば本物のおひめさま、なんだとか。不思議なお話だ。この物語に登場する姉妹、万佑子と結衣子は、幼少の頃この童話と同じ実験をしたが豆の存在には気づくことが出来なかった。

 

大人になった結衣子が、誘拐され帰還した姉を別人だと確信し続け現在に至るまでの葛藤と疑念を、当時を振り返りながら回想する。そういう形式なので、まあ途中までは退屈極まりなかった。私も「下の子」なので分かるが、上の子と下の子との扱いの違いはきょうだいあるあるの範囲内だし、結衣子もそれほど鬱屈した感情を持っているようには思えなかった。ごくごく普通の姉妹という感じ。姉が行方不明になり、母親が結衣子を使って様々な捜索をさせるようになってからやっと物語が動き出したという印象。この母親、気持ちは分からないでもないがちょっと異常さが際立ったな。

 

最後に明かされる姉の正体には驚いたが、ちょっと現実味に乏しい。いくら成長するったって、酷い体験をしてきたからって、身内ならなおさら分かるだろうに。結衣子が突きつけられた現実が孤独であったことに何とも言えない気持ちになった。下の子、って家族の重大な問題や秘密を話してくれなかったりするからね。その疎外感が共感出来てしまって、ひたすらキツい結末だった。