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怪物はささやく/A Monster Calls  (ねこ3.7匹)

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パトリック・ネス著。シヴォーン・ダウド原案。ジム・ケイ絵。池田真紀子訳。

 

真夜中過ぎ、墓地にそびえるイチイの大木の怪物がコナーのもとに現われて言う。「おまえに三つの物語を話して聞かせる。わたしが語り終えたら、おまえが四つめを話すのだ」母の病気の悪化、学校での孤立、そんなコナーに怪物は何をもたらすのか。心締めつけられる物語。(ゴヤ賞本年度最多9部門受賞) (裏表紙引用)

 


母親が不治の病に冒され、学校ではいじめに遭っているコナー。12時7分、コナーの部屋にいつも現れるイチイの木の姿をした怪物は、コナーに一晩ずつ3つの物語を聞かせると言う。4つめの物語はコナー自身が語れ――。怪物、祖母、母の病気、離婚し家庭を作った父、全てに反発するコナーだが――。

 

孤独な少年が、母の死を真正面から受けとめ、いじめにも負けず強く生きていくための物語。ハリー・ポッターの挿絵を担当しているというジム・ケイの不気味かつ繊細な絵が挿入されるたびにゾクゾクっと背中が震える。コナーのまだ幼い人生は誰よりも過酷で、だけどそれが圧倒的な現実だということを容赦なく突きつける。そしてなお、母と子の愛情の深さが見ていられなくなればなるほど、目をそらせない厳しさが読者を襲う。怪物の語る理不尽な物語がコナーの日常とリンクしていき、澱んでいく。怪物の存在は教師的だが、コナーなら出来るという信頼あってこその課題だったように思う。児童書だと思って油断していると、不幸の落とし穴にはまってしまいそう。