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西巷説百物語  (ねこ4匹)

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京極夏彦著。角川文庫。

 

大坂屈指の版元にして、実は上方の裏仕事の元締である一文字屋仁蔵の許には、数々の因縁話が持ち込まれる。いずれも一筋縄ではいかぬ彼らの業を、あざやかな仕掛けで解き放つのは、御行の又市の悪友、靄船の林蔵。亡者船さながらの口先三寸の嘘船で、靄に紛れ霞に乗せて、気づかぬうちに彼らを彼岸へと連れて行く。「これで終いの金比羅さんや―」。第24回柴田錬三郎賞を受賞した、京極節の真骨頂。 (裏表紙引用)


巷説シリーズ第5弾。なのに記事にするのは多分初めて^^;いや、色々タイミングというものがあってだね。でも、実はこのシリーズ、百鬼夜行シリーズの次に好きなシリーズなのだ。短編集ではあるけれど、全てのお話に長編ぐらいの濃密さがあってだね。ちなみにこの本だけページ数少なめ。600ページあるんだけど、思わず「薄っ」と思ってしまった(笑)。

 

実はこれ、妖怪ものと見せかけて、実は化け物妖怪のたぐいは実際には出てこない。あくまで、ストーリーの方便として出てくるだけ。駆け落ちの話や殺人の話、狂人の話、浄瑠璃名人の話、疫病の話、それぞれ登場人物もストーリーも違うが、表向き事件には何の関わりもない林蔵という帳屋の男が、悩める彼らの話を聞いて事の真相を暴き出し、悪人に救われる道とそうでない道を提示し、結局は――という流れが全てのお話の骨子となっている。分かりやすい勧善懲悪ものではあるが、人間の欲望の浅ましさや妬み嫉みの愚かさ、寂しい者の悲しさを描いているので最後には必ずしんみりした気持ちになるという。最後の最後に物語の様相がガラっと変わるので、ミステリ好きにも向いているかも。

 

このシリーズはこれで打ち止めかしら。