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不良品探偵  (ねこ3.8匹)

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滝田務雄著。創元推理文庫

 

手遅れ確定のダメ人間、ネジの抜け落ちた規格外の頭脳を太い鉄筋でつなぎとめている男。白城一馬の変わり者の先輩・藍須救武を評する言葉は数あれど、端的に言うならば、「伝説の不良品」だ。普段はしようもないお馬鹿な言動で一馬を振りまわす藍須だが、自らの高校やバイト先でひとたび謎を前にすると謎解きの天才に?!ミステリーズ!新人賞受賞作家による全五篇の連作短篇集。(裏表紙引用)

 

 

「田舎の刑事」シリーズで人気の滝田さんの新シリーズー!めっちゃ良かった。高校生を主人公にした作品は初めてだということでなかなか軌道に乗るまで時間がかかったらしい。そうだろうなあ、という感じに1篇目だけ浮いてる(笑)。キャラがまだ歩き出していないのは別にしても、1篇目だけ殺人事件だし。しかし描き進めていくうちに興が乗って来たのか、不良品探偵・藍須救武(あいすきゅうぶw)としっかりもの&ツッコミ役の白城一馬の掛け合いが自然になってきた。

 

そしてこの作品の特徴は、もう1組漫才コンビがいるところ。藍須たちの住む町の治安を守る海老名小梅(♀)刑事と、相棒の蟹江。この海老名さん、刑事としての能力はあるものの自分をサバサバ系(実際は殺伐系)美人と思い込んでいるが無茶やボケばかりのぶっとび刑事。そのツッコミ役が蟹江のほう。一馬はどっちにもつっこまなくちゃいけないから忙しそう楽しそうだ。

 

事件は非日常の謎のものがメインで、引き裂かれたぬいぐるみや肝試し大会での企み、海老名所有のグリルを壊した犯人探しなどなど、謎だけでワクワクするものが多い。論理もしっかりしているし、藍須の有能さがわかる。推理以外はダメダメだけど、腹の立つキャラではない(これ重要)。事件の真相はそれなりに人間的ではある割に緩すぎて心に響いたりはしないけど、軽い読み物としては最高。あとイラストがすき。