すべてが猫になる

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その手をにぎりたい  (ねこ4.2匹)

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柚木麻子著。小学館文庫。

 

八十年代。都内で働いていた青子は、二十五歳で会社を辞め、栃木の実家へ帰る決意をする。その日、彼女は送別会をかね、上司に連れられて銀座の高級鮨店のカウンターに座っていた。彼女は、そのお店で衝撃を受ける。そこでは、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べるのだ。青子は、その味にのめり込み、決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。そして東京に残ることを決めた。お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、転職先を不動産会社に決めた青子だったが、到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。(裏表紙引用)

 

 

すっかり「出たら必ず読む作家」の仲間入りをした柚木さん。この作品は、もし自分が柚木作品を知らなかったらまず手に取らないタイトルだなあと思いつつ。あらすじを読む限り恋愛ものっぽいし。

 

…と思って読み始めたら全然違った。バブル真っ只中に生きる平凡なOLの青子が、銀座の高級鮨店で食べた鮨の美味しさに感動し、職人である一ノ瀬にも恋をするという恋愛ものと言えば恋愛ものな物語なのだが、メインとなるのは「バブルを生き抜いたいちOLの恋と仕事と生き方」だ。

 

最初は青子が好きではなかった。座るだけで3万円とも言われる鮨屋に通うためにがむしゃらに働くと言えば聞こえはいいが、自分には青子の考え方はホストクラブにはまる女性とそう変わらないように見えたから。本当に美味しいものを食べたり、高級なものを身に付ける喜びと価値というものは確かにあるので否定しないが、やはり身の丈に合っているかどうかが大事。ムリして手に入れたものは決して他人からは洒脱に見えない。そもそもが、お金で手に入れたものって最後に何も残らない気がする。青子が手に入れられなかった様々な自分が、バブルという泡のように消えた時代と完全にリンクして見えた。

 

私自身はバブル世代ど真ん中ではないのだが、当時中学生~高校生~ぐらいだったのでその時代の雰囲気や流行ったものなどはなんとなく記憶している。ソバージュヘアだのアッシーだのアニエスベーだのジュリアナだの、懐かしいなーと思いながら読んだ。10代の頃街歩いてたら100万円の化粧品とかラッセンの絵とか買わされかけたことあるよ私も。。しかし営業のために客の靴に入ったシャンパン飲まされるとか女性に1人で食事させるのは男の恥とかすごいな^^;狂っていたとしか思えん。

 

青子の最後の決断が間違いかどうかは分からないけれど、応援したいと思えるラストだった。青子が生きてたら50代。今ごろどうしてるかな。