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惑星カロン  (ねこ3.7匹)

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初野晴著。角川文庫。

 

喧噪の文化祭が終わり3年生が引退、残った1、2年生の新体制を迎えた清水南高校吹奏楽部。上級生となった元気少女の穂村チカと残念美少年の上条ハルタに、またまた新たな難題が?チカが試奏する“呪いのフルート”の正体、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた密室の“鍵全開事件”、そして神秘の楽曲「惑星カロン」と人間消失の謎…。笑い、せつなさ、謎もますます増量の青春ミステリ、第5弾!(裏表紙引用)

 


映画化に合わせたのだろうか、あっという間の文庫化。文庫派の私としてはありがたいが、あんま早いのもナンだかな。

 

というわけでハルチカシリーズ第5弾。それぞれ100ページ近くあったり表題作はそれ以上あったりするので中編集みたいな読み応え。

 

「チェリーニの祝宴」
新しいフルートが欲しくてたまらないチカは、ある中古楽器店で特殊なフルートに出会った。店主と話していくうちに、それが持ち主を何度も替えた呪いのフルートだということが判明するが…。呪いの本当の正体については面白かったが、少々専門的な要素が強い内容だったな。後日談の猫にはホッコリしたけど。

 

「ヴァルプルギスの夜」
「自称ОB」と名乗る人物から出回った、「音楽暗号」に挑戦することになったチカたち。音楽エリートの生徒や合唱部、軽音楽部まで巻き込んでの難問だったが――。これもちょっとクラシックの素養がないと理解が追いつかないというか楽しみづらい。みんなの得意分野が発揮されるところは良かった。自称ОBの目的は許しがたいがリアルにありそうなのが怖いな。

 

「理由ありの旧校舎」
ある朝登校したら、旧校舎の全ての窓やドアが全開になっていた。盗まれたものはなさそうだが、犯人の目的は何か――。犯人がそれをやった理由が十分納得のできるものだったので面白かったが、うっかりミスの要素はないほうが良かった。チカたちもそうだが、それぞれ専門的に何かを学んだり楽しんだりするのは素敵なことだなあと。やっていいことだったのかは何とも言えないが。

 

「惑星カロン
フルート二重奏の楽曲「惑星カロン」を巡って、ハルチカや草壁先生、その曲の魅力に取りつかれた少女が翻弄される。草壁先生の過去が少しだけ紐解かれた感じ。デジタルツインとかSF的な内容もありテーマとしては広がりが凄い。


以上。
このシリーズめっちゃ好きなんだけど、今回はちょっといつもより専門寄りの内容が多くてキツかった。吹奏楽部ものと言えどメインテーマは「青春」なのだから、配分の問題だと思うけど。チカのすちゃらかな性格は健在。着眼点はいいのにミステリ的に甘いものばかりだったのが残念だなあ。