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盲目的な恋と友情  (ねこ3.8匹)

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タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が―。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。(裏表紙引用)

 


辻村さんの文庫新刊。いやあ、す、すごいな^^;何が凄いって、ほんとにタイトル通りなんだけど、恋と友情がどれだけ人を盲目にさせるか、っていうテーマをふか~く細か~く切り込んでいること。元々女性の歪んだ心や嫉妬心、虚栄心を描くのが上手な作家さんだけど本書で爆発している感じ。

 

この物語は「恋」「友情」の2章から成っていて、語り手は変わるが完全に繋がりのあるお話。「恋」パートではタカラジェンヌの娘である蘭花が、皆の憧れである学生オケの指揮者・成実と交際を始めることにより生じる様々な心の流れや酷い出来事、それを取り巻く周りの人々との軋轢が描かれる。蘭花は美貌にも恵まれ、決してダメな人柄でもないのだが恋に夢中になるあまり不幸を呼んでいくという。。設定が若いというところを差し引いても、読んでいるこちらが「なんで?」と身をよじるような内容だった。堂々とした浮気(その相手がエグい)、暴力、脅迫。それでも恋を免罪符に別れを決意しない蘭花。ダメ男に惹かれる女性って意外といるし、全く気持ちが分からないわけではないけれど・・・これは限度があるよね。私が友人だったら見捨てるかも。プロローグの意味が最後に違う形となって判明したのは驚いた。嫉妬とかそんな単純な話ではなかったのね。

 

変わって次の「友情」。蘭花の親友である留利絵が語り手となるのだが、これもまた理解不能な感情ばかり。容姿に恵まれなかったことをコンプレックスにして生きているのはまだいいとしても、蘭花への異常な固執がただただ気持ち悪かった。恋に興味がないと言いながらプライドだけはあるというか。蘭花の元カレとのエピソードを作り替えて蘭花に話す姿とかもう最悪で。。いやいや、それ付き合ってないから。
間を挟む蘭花の友人・美波もあんま好きなタイプじゃなかったし。もしや全員タイプは違うけど同族なのではと思ってしまう。

 

そしてラストで驚愕の展開。正直、かなりこの結末にはヘコんだ。。。ブラック方面に行かない方が私は救われたなあ。これでこそ辻村さんなのだけど。終始不愉快で心がザラザラするお話ではあったけれど、描き込みの圧倒的なリアリティはさすがだったな。