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怪しい店  (ねこ3.8匹)

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有栖川有栖著。角川文庫。

 

推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、敬意を持ってこう呼ぶ。「臨床犯罪学者」と。骨董品店“骨董 あわしま”で、店主の左衛門が殺された。生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、火村と有栖の名コンビが解き明かす。火村英生シリーズ、珠玉の作品集が登場。(裏表紙引用)

 

 

火村シリーズ第22弾。過去作「暗い宿」の続編だそうな(読んでいなくても支障なし)。てか、前作「菩提樹荘~」から約1年も経っているのか。。。有栖川作品自体は定期的に出てるから間隔が意外と長いことに今更ビックリ。

 

「古物の魔」
古物商の店主が殺された。発見者は店主の甥で、店主は店の押入れの布団と布団の間で発見したという。火村さん&アリスは調査に乗り出すが――。100ページほどの中編。凶器の意外性と綿密なアリバイトリック崩しが丁寧で楽しめる。古物商という舞台を存分に生かした作品。

 

「燈火堂の奇禍」
アリスが初めて立ち寄った古書店で窃盗事件が発生。被害に遭った店主は相当の変わり者で――。現場に行かずにここまで論理立った推理が出来るのがただただ凄いな。ただ私は10日後に来いとか言われる古本屋に通うのは...めんどくさい。火村さんの、商売に対する価値観が聞ける。

 

「ショーウィンドウを砕く」
芸能事務所の社長が仕組んだ完全犯罪。しかし火村さんの目は細かい瑕疵を見逃さなかった――。ここまで念入りな犯人でもこういううっかりミスをするのだな、と。火村さんが推理で1歩1歩犯人を追い詰めて行く緊迫感がいい。火村さんは過去の自分と犯人を重ねた?

 

潮騒理髪店」
見知らぬ田舎町にやって来た火村さんは、素敵な名前の理髪店に目を留める。その町で見かけた些細な出来事とその理髪店が驚きの結びつきを見せる――。殺人や事件を扱わないので穏やかな雰囲気。火村さん散髪してるよ!とテンションアップ(←?)。怖いお話と思いきやホッコリ温まる。それにしても、「油理髪店」よりはずっといいな(笑)。

 

「怪しい店」
「みみや」――。人の悩みをただ聞くだけの風変わりなお店が繁盛しているらしい。その店の妻が殺され、容疑は夫、客など様々な人々に及ぶが――。まあ、悪いことをしちゃダメっていう身も蓋もない話ってことで。他人の秘密なんて知るもんじゃないなあ。私、ただ相槌を打つだけの人なんてイヤだけどなあ^^;話聞いてないと思う。。。

 

以上。どれも火村ものらしいお話でレベルが高かった。火村さんがアリスをどうして同行するのか、が分析されていて萌えどころも多し。コンビで犯人を罠にかけたりいつもの漫才トークもキレがある。火村さんの闇がチラチラ垣間見えるのが味かなあ。新刊出たようだし次作も楽しみ。