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水族館の殺人  (ねこ4匹)

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青崎有吾著。創元推理文庫

 

夏休み最中の八月四日,向坂香織たち風ヶ丘高校新聞部の面々は,取材で市内の穴場スポットである,丸美水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると,B棟の巨大水槽の前で驚愕のシーンを目撃。な,なんとサメが飼育員と思われる男性に喰いついている! 駆けつけた警察が関係者に事情聴取していくと,容疑者は11人にもおよぶことに。しかもそれぞれに強固なアリバイが……。袴田刑事は,仕方なく妹の柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。“若き平成のエラリー・クイーン"が,今度はアリバイ崩しに挑戦。(裏表紙引用)

 

 

裏染天馬シリーズ第2弾。

 

前作「体育館の殺人」では、一本の傘から全ての状況を推理し論理を組み立てるという完全本格推理の王道を地で行く作風に驚き素直に感動したものだった。本書では同じくアリバイトリック崩しと現場の状況から可能性のないものを排除していく消去法による推理を見事に披露してみせたと言える。事件はサメの水槽の中に落とされた飼育員がサメに喰われるというもので、前作よりも派手で引きが強い。前作の推理自体は秀逸だったので、ミステリ的には「こちらの方が上」とは思わない。同じくらい。まさしく「平成のエラリー・クイーン」という称号にぴったりの、期待の新人。

 

本来、このレベルのものならもっと評価を上げても良いはずなのだが、キャラクター造形や事件以外のエピソードがどうしても個人的には引っかかった。学校に巣食う変人高校生探偵ということでキャラクターを立たせようという作者の意思は明確なのだが・・・私の年齢では高校生に萌えるなんていうことは至難の業だ。だってどんなに頑張っても色気ないもん。卓球の試合シーンとかも長すぎる多すぎるで、「これ後から事件に関係してくるのかな?」と思ったぐらいだ。なかったけど。裏染の家庭の事情なんかも少しずつ明らかになってくるのだが、ごめん、あんま興味ない。嫌いだったわけでもイラっとしたわけでもないけども。唯一面白いなと思ったのは裏染の身内。この部分に関しては完全に私見なので参考になさらぬよう。描写力自体はあるのよ?

 

話戻すけど、それにしてもこの事件、1番衝撃だったのは動機だと思ったんだけど。。あんまそこに言及している人居なかった。なんでだろ。まあともあれ、シリーズを追いかけていくつもり。本格ミステリ好きはぜひ。