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パードレはそこにいる/Uccidi il Padre (ねこ4.4匹)

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サンドローネ・ダツィエーリ著。清水由貴子訳。ハヤカワ文庫。

 

勇猛果敢でずば抜けた能力を持ちながらも、現在は休職中の女性捜査官、コロンバ。少年時代を誘拐犯に監禁されて過ごし、閉所恐怖症をわずらう失踪人捜索専門のコンサルタント、ダンテ。ローマで女性が惨殺され、その六歳の息子が行方不明になったとき、捜査の行く先を懸念する警察幹部は、ひそかに事件を彼らの手に託した。それぞれ過去の凄惨な出来事が残した傷を抱えるふたりは、喧嘩を重ねつつも協力して真相を追う! (上巻裏表紙引用)

 


読む前から面白い本というものがあるとするならコレだろう。ジェフリー・ディーヴァー絶賛の、英米で大人気、世界各国で刊行が決定しているという本書。あとは期待通りで留まるか期待以上楽しめるかというところで決まる。結果を言うと本書は後者だった。

 

まずは少年の監禁描写から始まる。痛々しいまでの洗脳教育と暴力。視点は変わって本書のヒロインであるコロンバ捜査官の登場。何やら過去に重大な事件を扱い心に酷い傷を負った様子である。休職中のコロンバだが、上司であるローヴェレの引きも影響し、母子行方不明事件を独自に追うこととなる。さらにコロンバの相棒として、過去に”パードレ”と呼ばれる人物に監禁され見事生還した経歴を持つ、ダンテというコンサルタントが登場。過去のトラウマから閉所恐怖症となり内に籠るダンテが、魅力ある捜査官コロンバと引き合ったことにより名コンビが誕生する。さらにパリで起きた恐ろしい爆破事件の状況が物語に挿入され、謎を深めてゆく。

 

次々と状況が一変するジェットコースター的な面白さもさることながら、登場人物一人一人の個性がハッキリしているため入り込みやすい。頼りにならない部下やコロンバと敵対する検事たちさえも生き生きと描かれているので、「コイツ嫌い!」「この人好感持てる!」なんて心でアチコチ叫びながら楽しませてもらった。イタリアの警察組織がちょっと他と違う感じなのと、とにかく名前がややこしい&登場人物が多いのでそれだけは苦戦したが。これは人名?地名?ってなったり。まあ、北欧ものほどじゃないか?

 

パードレの企みの恐ろしさ、コロンバが関わっていた事件の悲惨さ、ダンテの心的外傷の深さ、警察のわかってなさ。人間の心情心理を全面に押し出しながら、事件の真相が1つ1つ思っていたのと違う方向へ明らかにされたり想像通りにピンチになったりと読む手が止まらなかった。わからず屋の上司がだんだん変わっていくのも見ものだったし、ダンテとコロンバがお互いに依存しながら立ち直って行く様が感動的だったり、思いもよらない味方の存在にホっとしたり。個人的には、主人公2人よりも敵役や部下のほうが好きだった。特に新人警察官のアルベルティ。頼りないけど結構やることが可愛い。。

 

そしてこの作品、「次号へ続く!」って感じで終わるのが憎い。続編執筆中かー。邦訳が手に入るまで何年かかるのかな。楽しみ。お気に入りのシリーズに追加~。