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獏の檻  (ねこ3.6匹)

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1年前に離婚した大槇辰男は、息子・俊也との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子を駅で見かける。32年前、父に殺されたはずの女が、なぜ―。だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられ、命を落とす。辰男は俊也を連れてO村を訪れることを決意。しかしその夜、最初の悪夢が…。薬物、写真、地下水路。昏い迷宮を彷徨い辿り着く、驚愕のラスト。道尾史上最驚の長編ミステリー! (裏表紙引用)

 

 

ミッチーの文庫新刊。これだけ読みこぼしていたので。

 

あらすじや表紙の雰囲気から、ホラー寄りのミッチーだこりゃ好きなやつだと思って浮かれて読み始めたのだが…。く、暗い。いや、暗いミッチーも暗い物語も好物のはずなのだが…。鬱々とした、淡々とした暗さなので気が滅入ってしまった。とにかく主人公も暗い。イメージ的には初期の真備シリーズのような感じ。悪夢と、閉塞的な村の雰囲気が入り混じって混沌とした世界観を作り上げているというのか。

 

離婚を経験した主人公の大槇は、日々過去の記憶と経験に悩まされながら生きている。ある日、駅のホームで目撃したのは32年前に故郷で失踪したはずの女・美禰子が轢死する場面だった。美禰子は、かつて大槇の父に殺されたと思っていたが――。謎を解くために大槇は俊也を連れて故郷のО村を訪ねる、という、発端はそういうお話。

 

固有名詞を□(四角記号)で表現したり、幻想的な恐怖を演出したりするところは「向日葵の咲かない夏」を連想させる。向日葵がお話のモチーフになっている感じもあるし。「向日葵~」は大好きな作品だったのだが、こちらの作品ではなぜかノれず。あまり過去の事件をさらうタイプの小説が好みではないのと、いつまで経っても何も起こらないので後半までは結構退屈だった。後半はさすがミッチーで、目まぐるしく真相がぽん、ぽんと明かされるのでページをめくる手が止まらなかったが。人と人が憎しみあい、誤解を生み、悲劇を呼ぶという一連の流れはやはり虚しくやりきれない気分になった。犯人は意外な人物だったし(こいつだろうな、と思っていた人物ではなかったのでズッコケ)。

 

しかしそんなこんなで感情移入出来なかった。方言も読みづらかったし(かと言って標準語で話されても困るが^^;)。大槇の父があの女性になぜそれを言ってしまったのか、とかなぜ確信がないのに犯人は大槇をそういう風に見たのか、とか疑問点も多く。派手で分かりやすいものが正義だとは思わないが、完全に自分との相性の問題ということでお許しをば。