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首折り男のための協奏曲  (ねこ4匹)

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伊坂幸太郎著。角川文庫。

 

被害者は一瞬で首を捻られ、殺された。殺し屋の名は、首折り男。テレビ番組の報道を見て、隣人の“彼”が犯人ではないか、と疑う老夫婦。いじめに遭う中学生は“彼”に助けられ、幹事が欠席した合コンの席では首折り殺人が話題に上る。一方で泥棒・黒澤は恋路の調査に盗みの依頼と大忙し。二人の男を軸に物語は絡み、繋がり、やがて驚きへと至る!伊坂幸太郎の神髄、ここにあり。(裏表紙引用)

 

 

伊坂さんの文庫新刊は黒澤もの。伊坂作品の中ではファンにかなり人気のあるキャラクターの1人だと思う。もちろん自分もそうなので喜びつつ読書。長編かと思いきや、連作短編集だった。登場人物が一貫しているわけではなく、全然違うお話もあったりするのであまり統一性がないのかな?と途中までは思っていたけれど、最終的には関連しているようなまとまっているような印象を受けた。

 

「首折り男の周辺」
現れては人の首を折って殺す「首折り男」の正体とは?ある男と風貌が似過ぎているために厄介な事柄に巻き込まれた男といじめられる少年との心の疎通がホッコリさせる。ちょっと怖いが。

 

「濡れ衣の話」
息子をある女に過失で轢き殺された男が登場。男は、加害者の女が平然と以前住んでいたマンションに住み続けていることを知り怨念を募らせる――。殺伐とした殺人のお話を描いているが、刑事とのコミカルな会話で中和している感じ。

 

「僕の舟」
水兵リーベ、僕の舟――。懐かしいな。元素記号とか大嫌いで覚えきれなかったけど。50年前の、たった4日間の初恋が忘れられない女性。なかなかにロマンティックな真相。

 

「人間らしく」
結婚してから夫ばかりかその家族に酷い扱いを受け続けている妹を助けるべく黒澤に相談する女性。伊坂さんはホントに吐き気のする人間を描くのがうまい。クワガタの実験が印象的。

 

「月曜日から逃げろ」
実家に久しぶりに戻ったら、盗まれた絵画が飾られてあったと黒澤に依頼してきた男。しかしこの依頼には裏があって――。黒澤のほうが一枚上手かな。

 

「相談役の話」
大学時代の友人が大出世。付き合いは毎年来る年賀状ぐらいだったその相手からいきなり呼び出しを受けた男は――。心霊現象絡みなのでゾクっとする結末。イヤな奴だったからスカっともするかな^^;

 

「合コンの話」
このお話だけちょっと特殊な構成になっていて面白い。友人の主催する合コンに出席することになった平凡な男が、実際の合コンで体験するちょっと普通じゃないお話。黒澤は出ないけど、伊坂作品でお馴染みのあの人が実は登場していたっていう。

 

以上。ちょっと読んでから日にちが経ってしまったのでうろ覚えのところもあり^^;。本作はいつもの伊坂作品よりかなり読みやすく、サラサラといけた感じ。コレ、っていう強烈な印象はないものの、全体的にはかなり楽しめた。こういうのがいい。