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いまさら翼といわれても  (ねこ4.2匹)

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神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘―折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)。奉太郎、える、里志、摩耶花―“古典部”4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇!(紹介文引用)

 


古典部シリーズ久々の新刊!4年ぶりとか?テンションあげあげ。と言っても一気に読み終わってしまうのだけど。。。今回は、ホータローはじめ古典部の4人のルーツに迫る貴重な一冊。

 

「箱の中の欠落」
ホータローが里志から受けた相談は、生徒会長選挙で起きた不正疑惑についてのことだった。票が1クラス分ほど増えているという奇妙な事件にホータローの推理が冴える。まあこれは、普通。

 

「鏡には映らない」
かつてホータローがクラス全員から恨まれた理由に迫る。卒業制作のリリーフを、明らかな手抜きで提出したホータロー。その真意とは?いかにもこの年代の女子が考えつきそうな、むき出しの悪意に背筋がゾっとする。

 

「連峰は晴れているか」
ホータローたちのかつての中学教員はヘリが好きだったのかという謎を解くお話。これほど短いお話で1人のなんでもない他人の人生に命を吹き込むことが出来るのだなと思う。

 

「わたしたちの伝説の一冊」
なぜ摩耶花は漫研を辞めたのか。ううん、なるほど、漫研でかつてこんなゴタゴタがあったとは。てか、女子めんどくせ。派閥とかあほらし。って今でこそそう思えるのだけど、自分の居場所が欲しいんだな、皆。「持っている人」にはそれが必要ない、それだけのこと。

 

「長い休日」
何の因果か千反田えると祠の掃き掃除をすることになったホータロー。遂に封印されていた「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」の原点となった過去が語られる。大したことないと言えばないのだけれど、自分はどっち側の人間でもないから思うだけかも。そうではない人間には真剣な悩みなんだろうと思うけども。

 

「いまさら翼といわれても」
合唱祭当日、ソロパートを歌うはずのえるが行方不明になった。ホータロー達は慌ててえるの立ち寄りそうなところを探すが――。タイムリミットがある中、動き回るよりは現場で推理し調べたほうが効率的だと言うのがホータローらしい。このお話の結末は描かれていないけれど、えるにとって大きな人生の転機となったことは間違いなさそう。

 

以上。

 

「鏡には映らない」が秀逸。他もどれも良かったが。古典部の面々の過去をそれぞれ掘り下げることによって、成長著しい現在の彼らを瑞々しく描き出す。ホータローはなんだかんだ、ポリシー通りには生きられないようだし摩耶花は自分自身を飾らなくなったし里志はしっかりしてきたし。えるはどうか分からないけど、最終話の経験で大きく変化があるのではないかな。この年代は、昨日と今日で大きな成長を見せたりするものだから。さて続きは何年後だろうかな。