すべてが猫になる

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誰も僕を裁けない  (ねこ4匹)

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早坂吝著。講談社ノベルス

 

「援交探偵」上木らいちの元に、名門企業の社長から「メイドとして雇いたい」という手紙が届く。東京都にある異形の館には、社長夫妻と子供らがいたが、連続殺人が発生!一方、埼玉県に住む高三の戸田公平は、資産家令嬢・埼と出会い、互いに惹かれていく。そして埼の家に深夜招かれた戸田は、ある理由から逮捕されてしまう。法とは?正義とは?驚愕の真相まで一気読み!「奇才」の新作は、エロミスと社会派を融合させた前代未聞の渾身作!! (裏表紙引用)

 


援交探偵上木らいちシリーズ第3弾。

 

新人としてはそろそろネタ切れになる頃だと思うが、今回は館ミステリーという定番で王道の本格的趣向を持ち出してきた。

 

語り手はらいちと戸田公平という平凡な男子高生。戸田はクラスで惹かれていた少女が犯罪に巻き込まれている現場を見てしまうが卑怯にも逃亡してしまう。やがて知り合った年上の女性・埼と恋愛関係になるが、埼の自宅に招かれた戸田は青少年淫行で逮捕されてしまう。一方のらいちは、メイドとして雇われた逆井邸で発生した殺人事件に巻き込まれた。2つの一見無関係に見える事件はどう繋がるのか――。

 

明らかに怪しい手紙にホイホイついて行くらいちや戸田の軽率すぎる行動(木に登ってお前は猿か)などなど、早坂さんのこの世界観じゃないと成立し得ないものが多い。〇る館というのも王道すぎてなんだかな、と思って読んでいたが終盤明らかになる真相の斬新さ奇抜さに目の前が開けた。犯人が立てた計画は「~であろう」に頼りすぎている感もあるが空想を肥大させすぎるのもそれがこのシリーズの持ち味。ツッコんではいけない大局も多いが、アイデアの細部や発想のユニークさがこの作家さんの最大の売りだと思う。褒め言葉だがこの人は出てくるのが少し遅かったかもしれないな。