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眼球堂の殺人 ~The Bооk~ (ねこ3.7匹)

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周木律著。講談社文庫。

 

神の書、“The Book”を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人が記者・陸奥藍子と訪れたのは、狂気の天才建築学者驫木煬の巨大にして奇怪な邸宅“眼球堂”だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う。密室、館。メフィスト賞受賞作にして「堂」シリーズ第一作となった傑作本格ミステリ! (裏表紙引用)

 

 

第47回メフィスト賞受賞作。

 

放浪の数学者と呼ばれる変人・十和田が、天才建築学者驫木が建てた「眼球堂」と呼ばれる豪邸に招待された。興味を持ったルポライターの藍子は、十和田のアシスタントと称して眼球堂に潜入する。しかし眼球堂では驫木が高さ10メートルのポールに突き刺さった状態で発見され、次々と招待客が変死体となる――。本格ミステリファンならよだれものの王道である。

 

表紙の端正でクールなデザインと、英語タイトルを脇に添えるスタイルや理系ミステリだということから森博嗣を連想する読者はかなり多いと思う。概ねそのイメージ通りの作品だったが、違うと言えば違った。「英語で最後が「er」や「or」になる単語で、カタカナにしたとき3文字以上になるものには長音をつけない」表記スタイル(「メンバ」「ミステリィ」など)はこの作品では採用されていないし、薀蓄も語りもこちらを圧倒するほどのものではない。大きな違いは、キャラクター、特に主人公の十和田に魅力が全くないところだろう。私にとってこれは致命的だった。だからとは言わないが、これはどちらかと言うと、綾辻行人の系譜に近いように思う。没個性=悪だとは思っていないが、この作品では、敢えて十和田を変なキャラクターにして個性を出そうとして失敗している感があって痛々しかった。。。
藍子だって、周りが言うほど「切れる」人物には見えなかったしなあ。

 

しかしまあ二番煎じ感はあれど、本格ミステリとしての出来はなかなか良かった。トリックは舞台設定に負けない大掛かりなものだし、どんでん返しも思い切ったものだと思う。文章も読みやすい。全体的な評価として、最近のこのジャンルではかなりハイレベルなのでは。私ももう少し続けて読んでみようと思う。