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祈りの幕が下りる時  (ねこ3.8匹)

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東野圭吾著。講談社文庫。

 

明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。捜査を担当する松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母に繋がっていた。シリーズ最大の謎が決着する。吉川英治文学賞受賞作。(裏表紙引用)

 


加賀恭一郎シリーズ第10弾!ワーイ加賀さんだ加賀さんだ!本屋であらすじを見て「あっ」と声が出そうになった。ガリレオシリーズも好きなんだけど、それとは比べものにならないぐらい加賀シリーズが好きだ。しかも、本書ではついに加賀さんの母親が登場。うーん、やっぱりというか、しっかりしていて、人間味のある温かさがあって、さすが加賀さんのお母様だという印象。幸薄い感じも含めて。

 

今回の事件は、明治座。舞台の演出家をつとめる角倉博美に関係する女性が変死体で見つかった。そして、日を近くしてその近所で発見されたホームレスとおぼしき人物の焼死体。加賀さんはその2つの事件に関わりがあるのではないかと推理するが…というお話。読者側は、それに加えて加賀さんの母親の死とその恋人と思われる男性がそれぞれの事件にどう関係していくのか、というところも気にして読むことになる。アパートの一室で亡くなっていた男のカレンダーに記された、12の橋の名前とは?角倉博美の過去とは?などなど、謎が山積み。結構頭の中でまとめるのが大変かもしれない。

 

登場人物の過去を掘り下げながら、徐々に明らかになる事件の真相には深い闇があった。もちろん同情をしてはいけない部分が多いのだけれど、それでも、こうするしかなかったのかなあ。単なる保身や欲望ではないところが加賀シリーズらしい事件だったなあと。1人1人の人生の一部を生きた気分になる。やはり他とは違うスゴさがあるな。

 

最後のあの手紙を加賀さん自身が読むところを見てみたかった。そこは想像しろよってことなんだけれど。加賀さんの事が色々分かって良かったけど、これぐらいで止めてくれたほうがいいかもしれない。陰のあるミステリアスなところが加賀さんの魅力でもあるので全て分かってしまうと興醒めしてしまわないか自分が心配。