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深泥丘奇談・続々  (ねこ3.8匹)

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2004年に怪談専門誌『幽』でスタートした〈深泥丘シリーズ〉。今夏、シリーズ完結篇となる第三集『深泥丘奇談・続々』がついに刊行。本格ミステリ作家が「謎→解決」の枠組みにとらわれない創作怪談に挑んだことで、第一集刊行時には大きな話題となった本シリーズ。作中の京都・深泥丘界隈に住む作家の「私」は、相も変わらず奇天烈な怪異体験とその忘却を繰り返しています。もはや「怪談」の枠組みにさえとらわれない、奔放な、前代未聞の「奇談」の数々――! とりわけラストに収録された「ねこしずめ」は、奇抜な発想、豊かな幻想味、文章の妙などがあいまって生まれた、およそ類例を見ない傑作小説。綾辻行人のさらなる新境地。(紹介文引用)

 

 

深泥丘奇談シリーズ第三弾はつばい!(∩´∀`)∩でも残念ながらこれで完結。本作も京都を舞台に、<主人公>の作家と、妻と、作家が通う病院の医師<石倉一><石倉二><石倉三>(今回<四>も登場、笑)と看護師の咲倉さんが登場し、不気味で幻想的な世界を描き出している。

 

「タマミフル」
友人宅からの帰路で出会った子供の幽霊?を見た私。それ以後眩暈に悩んだ私がかかりつけの深泥丘病院へ足を運ぶと――。例の騒動を彷彿とさせる設定。第1編らしいフワフワとした怪奇譚。

 

「忘却と追憶」
深泥丘神社のお祭りがテーマ。七年前にこの街に越してきた私は、そのお祭りに参加したことをすっかり忘れていて――。<忘却の面>というモチーフと謎の動物が効果的な恐怖の物語。

 

「減らない謎」
年齢的なことからメタボを心配し始めた私はダイエットを決意。最初は順調に体重を減らしていたが、徐々に体重は増加を始め――。「痩せゆく男」の逆バージョンのようでゾクゾクするお話。幻想的でありながら、妻の工作、という疑いを持ち出すあたり現実的で面白味がある。少し作風に変化が。

 

「死後の夢」
ドライブ中恐ろしい幻覚(夢?)を見た私は、不思議な場所に建つ深泥丘病院に足を踏み入れる。しかしそこは自分の知っているあの病院とは少し違っていて――。この作品だけ少し変わりダネをぶっこんで来ており、クスリと笑えるかも。ちょっと遊びすぎかな?私は嫌いではない。

 

「カンヅメ奇談」
執筆のためにホテルにカンヅメされた私。しかしその室内には、かつての大叔父との記憶を思い起こさせる不気味な現象が――。やっぱホテルものは幽霊が定番のせいか、ゾっとするなあ。ひた、ひたた。。。

 

「海鳴り」
私が再生したビデオ映像には海を眺める女性が映っていた。よく見るとその女性を私はよく知っている――。深泥丘の登場人物の謎に少し入り込んだ作品。ある部屋に入りたがる飼い猫がナニを見ているのか、終始不気味。

 

「夜泳ぐ」
ダイエットの延長で会員制のクラブへ入会した私は、プールで泳ぐことを楽しんでいた。しかしこのクラブには、もう1つ別のプールがあるようで――。謎のプールを探しに行く過程が一番スリルがあった。しかしこの深泥丘の住人は全員謎があるなあ。

 

「猫密室」
本格ミステリの短篇を依頼された私は、雪密室ならぬ猫密室というアイデアを閃くが――。<私>=綾辻さん、とどうしても重ねてしまうので、この作品読みたいなあとか思いながら。「どんどん橋、落ちた」風のオチにドッキリ。

 

「ねこしずめ」
妻が見たという猫の夢の話から、この街に伝わる<猫柱>の事実を知った私だが――。綾辻さんは愛猫家なので、「らしい」作品と言おうか。人柱というと恐ろしいものだけれど、この作品に出てくる猫柱の正体がなんとも視覚的で愉快。

 

以上。完結編と言っても、幻想怪奇ものなので何か事実が判明する!とか物語が綺麗に収束する!とかではないのだが、描ききった感はあるのでは。幻想ものはお得意なので、また違うシリーズが出ることを期待(「Another」もあるしね)。なんといっても装丁がとても素敵なので、これから読まれる方はそれも楽しみにしていただきたい。