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ST 化合 エピソード0 警視庁科学特捜班  (ねこ3.8匹)

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今野敏著。講談社文庫。

 

現場は検察の暴走を止められるのか?エリート検事は殺人事件を異例の陣頭指揮と鑑識結果の強引な解釈で早期解決を強行する。疑念を抱く捜査一課の若手・菊川と所轄のベテラン・滝下は独断で動き始める。拘束された被疑者が“落ちる”までに二人は証拠を捜し出せるのか!?「ST警視庁科学特捜班」シリーズ、序章。(裏表紙引用)

 


「ST 警視庁科学特捜班」シリーズのスピンオフ。STで、捜査一課のベテラン刑事としてレギュラー登場する菊川が主人公。まだ彼が新人刑事のころのお話。板橋で起きた刺殺事件をベテラン刑事の滝下と共に捜査していくという「ザ・刑事もの」で、通常のSTシリーズとは全く毛色が違う。今野作品らしい、警察官それぞれの人間性を重視した人情ものと言ったほうが近いか。時代もバブル後の1990年が舞台なので、科学捜査どころか刑事は喫茶店の電話使ってるし撮影には使い捨てカメラを買ってくるしオートロックにオロオロしてるし面白いってか大変だな。逆に楽なのかなと思ったのが、関係者の口が軽いというか、皆が皆付き合いのあった人間の住所や電話番号をアドレス帳に書き留めてるとこ。

 

事件そのものは普通ぐらいの面白さなんだけど、やはり烏山検事という捜査員共通の敵の存在が際立った。事件解決が目標というより、私情で冤罪を生もうとする烏山検事をどうやり込めるか、というのがストーリーの肝だったと思う。自分の恩師に見せたいってなんじゃそら。無実の罪で捕まるほうはたまったもんじゃないわあ。菊川と滝下の関係性の変化も一番の読みどころ。最初滝下は捜査中にパチンコに行くわやたらお茶したがるわサッサと帰るわでいい印象なかったけど、凄い刑事だったのねえ。やはりこういうところが今野作品の魅力だな。STの面々が一切出てこなかったのは残念だったけど、ST設立に至るまでの発端となった事件のよう。それでも十分に満足した。また滝下とのコンビが見たい!(それにしても私、読み終わって今もなおあの烏山検事にイライラしてるよ。。。)