すべてが猫になる

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スタフ  (ねこ3.8匹)

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街をワゴンで駆けながら、料理を売って生計をたてる女性、夏都。彼女はある誘拐事件をきっかけに、中学生アイドルのカグヤに力を貸すことに。カグヤの姉である有名女優のスキャンダルを封じるため、ある女性の携帯電話からメールを消去するという、簡単なミッションのはずだったのだが―。あなたはこの罪を救えますか?想像をはるかに超えたラストで話題騒然となった「週刊文春」連載作。(紹介文引用)

 


ミッチー新刊。相変わらずのジェットコースターミステリー&どんでん返しで面白かった。初の女性ヒロインということでどうなるかなーと期待したが、違和感なし。夫と経営するはずだった移動デリを、相手の浮気による離婚で1人で始めることになった夏都。海外で医師として活躍する姉の息子・智弥を育てながら、カツカツの状態で頑張っている。常連さんも増え、智弥の塾の講師である菅沼や駐車場の貸主・棟畠という味方もいて、カツカツながらも順調に幸せを感じている夏都だったが、ある日勘違いで車ごと誘拐された夏都の身に降りかかった事件が人生を変える――というストーリー。

 

移動デリの料理は美味しそうだし、複雑な年頃の智弥といい、中学生アイドルのカグヤといい、その取り巻きといい、登場人物はそれぞれ魅力的だ。個人的にツボにはまったのは講師の菅沼で、変人ゆえになかなか夏都への好意をストレートに言えないところが真面目で好感が持てる。単に悪役は悪役、まともはまともという図式にはならず、それぞれがそれぞれに複雑な感情を抱えていて、若者から大人まで、人生は思い通りにはいかないが一歩一歩進んでいるのだという着地点がとても良かった。1つイライラしたのが夏都の元夫への未練。なんでそこで元夫の家に行くかな。。。自分がうまくいっている、自分の方が綺麗というアピールは不安や嫉妬を抱いてますよという証拠だと思うのだけど。まあそこが人間のややこしいところか。

 

ラストについては賛否両論あるかな。終盤の、ある首謀者の本当の心や夏都の心の変化を気に入って読んでいたので、想像の余地を与えられすぎのこのラストは少しモヤモヤが残った。みんな踏み出せるといいね、全ての都合の悪いことをチャラにするのではなく、そこから始まる物語もあると思うから。