すべてが猫になる

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黒冷水  (ねこ3.7匹)

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兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。(裏表紙引用)

 


作品に圧倒されてしまってどう感想を書けばいいか分からなくて数日放置していた。これ好きじゃない。だけど凄い。思春期の、絶望的に性格が合わない兄と弟の憎悪と変質的とも言える兄の心情と行動が、わかるようで、でも理解出来なくて読んでいる間ずっと苦しかった。自分にも仲の悪かった兄が居るので(ここ数年で嘘のようにわだかまりが取れいい関係になった)、消えてしまえばいいと思うほどの嫌悪感、だけど身内だから切り離せない宿命のような説明のつかない気持ち。その中途半端な気持ちが、「部屋をあさる」という行為に繋がる心理も分かってしまうだけに苦しかった。

 

部屋をあさる、ここまではどの家庭でも珍しくはないのかなあ、と思うけれど、予防策として一般の人はせいぜい「鍵をつける」ぐらいじゃないだろうか。「あさった証拠を掴むために罠をしかける」手段やそのやり方があまりにもエグすぎる。さらにそれを両親に見せつけるその労力を思うと弟を正論で心底軽蔑する兄のほうが実は異常者では?と思う。それに気づけない兄の傲慢さ嫌らしさはよくここまで書き切ったと思えるほど。17歳でよく描けたなと思うべきか、17歳だからこそ描けたと言うべきか。多分一番私がゾっとしたのは、バラエティ番組でよくお見かけする作者のその姿と作品のギャップなんだけども。

 

てか、表紙の写真を見て「うわあっ!こ、これはあのシーンの!!」と気づいて「やられた!」と思った。心臓に悪い。。。