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居心地の悪い部屋/The Uncomfortable Room (ねこ3.8匹)

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まぶたを縫い合わせた時点で手順を忘れた二人を描くB・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」。二の腕の紋章のようなものの記憶をめぐるA・カヴァン「あざ」。その他、J・C・オーツ、K・カルファスなど短篇の名手たちによる12の物語。妄想、悪夢、恐怖、幻想、不安など、「もう二度と元の世界には帰れないような気がする」(本書「編訳者あとがき」短篇アンソロジー。(裏表紙引用)

 

 

《目次》
ブライアン・エヴンソン「ヘベはジャリを殺す」
ルイス・アルベルト・ウレア「チャメトラ」
アンナ・カヴァン「あざ」
ポール・グレノン「どう眠った?」
ブライアン・エヴンソン「父、まばたきもせず」
リッキー・デュコーネイ「分身」
ダニエル・オロズコ「オリエンテーション
ルイス・ロビンソン「潜水夫」
ジョイス・キャロル・オーツ「やあ! やってるかい! 」
レイ・ヴクサヴィッチ「ささやき」
ステイシー・レヴィーン「ケーキ」
ケン・カルファス「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」


テラさんのオススメ。ジョイス・キャロル・オーツとブライアン・エヴンソン目当てに。表紙真っ黒^^;12編収録のアンソロジーということで収録作は多いがそれぞれのお話が非常に短いので全体で200ページもないのであった。この作品集は本当に「居心地の悪い」という言い方にピッタリな作品ばかりで、あとがきにあるように「どのジャンルに入れていいかわからない」ものばかりだった。正直言うと、わからなすぎておいてけぼりを喰らう作品も少なくはなかった。まさに居心地が悪いとはこのこと。荒唐無稽な夢をそのまま描いていると言ったら分かりやすいかな。

 

そんな中でお気に入りは、まぶたを縫い合わせる少年たちの会話が殺伐とした「へべはジャリを殺す」、眠り方を様々な比喩に喩えた会話だけの「どう眠った?」、この中では一番ストーリーがきちんとあった、殺意と善人についてがテーマの「潜水夫」、敵対しているチームの選手同士が入れ替わったらファンはどちらを応援するのかという究極のテーマ「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」だろうか。オーツは残念ながらこの作品ではピンと来なかった。よくこれを訳せたな、と感心はしたが。エヴンソンは「遁走状態」にGOだな。