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BⅠSビブリオバトル部1 翼を持つ少女  (ねこ4.2匹)

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山本弘著。創元SF文庫。

 

ビブリオバトルとは、本を通して人をつなぎ、人と知識をつなぐ知的ゲーム。SF小説が好きな15歳の少女・伏木空は、SFに理解のない同級生・埋火武人の誘いでビブリオバトル部に入部する。メンバーはそれぞれ得意分野を持つ個性派揃い。張り切って図書室でのデビュー戦に臨む空だったが…。紹介書籍は多種多様、臨場感たっぷりの本格的ビブリオバトル青春小説シリーズ開幕! (裏表紙引用)

 

 

SF文庫なんて数えるほどしか読んでいないのだが、以前べるさんが記事にされていてとても印象に残っていたので文庫化を見てお持ち帰り。高校生書評大会?みたいなものは知っていたのだが、ビブリオバトルのほうは聞いたことがある、ぐらいだったのでその興味もあって。これ大好き、最高。上下巻一気読みなんてなかなかしませんよ私(実質3日かけてるけど)。

 

主人公は、容姿は冴えないがSFへの造詣が誰よりも深い少女、伏木空。校則がなく、生徒も多国籍で自由な校風の美心国際学園高等部10年生(高1?)。友だちはSFだけ、という空が、ノンフィクションしか読まないクラスメートの埋火武人と出会い、彼の所属するビブリオバトル部に入部するという物語。科学が得意な明日香、関西弁を操る部長、見た目が可愛い銀、BL大好きミーナなどなど、キャラクターも個性溢れていて楽しい。

 

この物語は、本への熱い情熱とその情報を垂れ流すと同時に、少年少女たちがビブリオバトルによって成長していく青春ものでもある。空のSFの知識量には正直ドン引いたが、自分の好きな本を誰かに知ってもらいたい、またそれを語り合いたいという気持ちはとても共感出来る。私もここで記事にして、「読んでみたい」と言ってもらえた時が一番嬉しいので。

 

同人誌についてそういえば変だなあと思っていた疑問も氷解したし、妄想でキャラクターをBL化してしまうことは原作者への冒涜か?なんていう、身に覚えありのチクリと痛いことも取り上げられていてちょっと体温上がった。あと、空が武人を苗字でしか呼ばない理由が深かったなあ。てっきり好きだからとかそういう甘いもんを想像していたので、エピソードの1つ1つがしっかりしているなあと。

 

ストーリーに関しては、昨日今日友だちになったような人のために本気で泣けたり怒ったり出来るところがどうも合わない面もあった。他作家でも時々出くわす作風なのだが、「汚れのないまっすぐな、正しい意見」がどうも私は苦手みたいだ。これもそういう系統かあ、と思って苦々しく読んでいたところ、ヘイトスピーチを得意とする他校の生徒(蟹江)が登場する。だが蟹江と対決をするくだりもそういう訳で違和感が拭えなかったりもした。てっきり対決して、勝って、ばんざーい。かと思っていたが、思わぬ伏兵が現れてビックリ。この作品は、私が常々持っていたそういう感情に言葉で説明をつけてくれたかもしれない。

 

ところで、こんなに登場人物がいるのに、ミステリ好きが1人も登場しなかったのが残念。不自然なほどに。。。SFよりメジャーなジャンルだと思うんだけどなあ。SFは私も本当は好きなんだけど、ミステリにかける時間を優先してしまうのでなかなか。まあ、ちょっとハードルが高いのは確か。ハヤカワ文庫の青背の棚の前に立つとあまりのカッコ良さにフラフラするもんね。でも空の演説を聴いていると、「わからなくても読んでいいんだよ」と言ってもらえているようでちょっと安心したりもする。「フェッセンデンの宇宙」は本当に面白かった。