ジェフリー・ディーヴァー著。池田真紀子訳。文春文庫。
突然の閃光と炎。それが路線バスを襲った。送電システムの異常により変電所が爆発したのだ。電力網を操作する何者かによって引き起こされた攻撃だった。FBIは科学捜査の天才リンカーン・ライムに捜査協力を依頼する。果たして犯人の目的は何か?人質はニューヨーク―史上最大の犯罪計画に、ライムと仲間たちが挑む! (裏表紙引用)
リンカーン・ライムシリーズ第9弾。
今回は、かの残忍狡猾な犯罪者「ウォッチメイカー」おかえりの巻。今回の犯罪は、電気を使った環境テロ。ディーヴァーはまったく色々な犯罪を思いつくもんだ。専門的なことは分からないが、この一瞬で人を殺す「アークフラッシュ」が恐ろしすぎる。溶けた金属が身体を…うぅぅ。。。おぇ。ライムシリーズでも1,2を競う残虐さなんじゃないかな。こんな死に方だけはしたくない。。。
前半は電気にまつわる説明に加え捜査の進まなさに退屈さも感じるが、毎度ながら後半の疾走感と緊張感は健在。罠を掛け合うライムチームと犯人、犯人の正体の意外性、対決の緊迫感に手に汗握る。特に犯人と対峙するシーンでは、ライムと犯人が心を通わせるシーンが印象深い。犯人がライムの身体のことで謝ったりね。ライム、こういうタイプに好感を持つのでは。犯罪者でさえなかったら。このシリーズの犯人はインテリばかりなので、ある意味同じ穴の貉なのかも?ライムと犯人の大きな違いは、そこに法と良心があるかないかってところ。まあシリーズものなのでサックスもライムも絶対死なないと分かっているのはサスペンスの弱点だと思うけれど。プラスキーが事故を起こしたり、ライムのところへ死神がやって来たり、介護士トムがぶち切れたり、ライムが大きな決心をしたりと内容は詰め込み放題。あまりファン人気はないかもしれないけれど、シリーズ中でも自分のお気に入りになった。
さて「頭の中だけで生きている」ライムが今後どういう人生を歩むのか。サックスは自分がいなくても生きていけるとかほざいてたけどそれは撤回したと思っていいのかな。