すべてが猫になる

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幻坂  (ねこ3.2匹)

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有栖川有栖著。角川文庫。

 

雨の坂道で出会い、恋におちるも、自意識のために、愛する女を死に追いやってしまった作家の苦悩が哀切な「愛染坂」。坂に棲みついている猫たちの写真を撮るために訪れた女子高生が、その夜から金縛りと奇妙な悪夢に悩まされる「口縄坂」。大坂で頓死した松尾芭蕉の最期を怪談に昇華した「枯野」など9篇を収録。大阪の町にある「天王寺七坂」を舞台に、その地の歴史とさまざまな人間模様を艶のある筆致で描く。(裏表紙引用)

 

 

有栖川さんの、怪奇幻想短篇集。大阪の「天王寺七坂」を舞台に様々な物語が繰り広げられる。本格ミステリー作家のイメージが強い有栖川さんだが、怪談もお得意。元々情緒的で美しい文章が特徴の作家さんなので、これはこれで合っていると思う。大人の怪談という感じ。

 

ちなみにわたくし大阪生まれ大阪育ち。作品の舞台になる松屋町(まっちゃまち)に2年間住んでいたこともあるが。。。出てくる坂については1つも分からない^^;写真が作品ごとについているのでイメージしやすいが。わたくしが普段暮らしているダサきちゃない大阪とは思えないほど雰囲気ある素敵な町として描かれているのが嬉しいところ。

 

面白かったのが、有栖川作品らしく探偵が出てくるお話が2つあったこと。心霊専門だけれど。もっといじればキャラも立ちそうなのでシリーズ化してくれても良いかも。逆に、らしくなく官能的な描写があったりと有栖川さんの創造力の広さを実感したり。ただ、最後の2編はちょっと時代が古く、読みづらい地名人名のオンパレードで辛かった。これがなかったらトータルの評価はもすこし高かったなあ。