すべてが猫になる

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キャットフード  (ねこ3.8匹)

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森川智喜著。講談社文庫。

 

極上のキャットフードを作りたい―化けネコ・プルートは人肉ミンチの生産に乗り出した。コテージに見せかけた人間カンヅメ工場に誘き寄せられた四人の若者。が、その中に人間に化けた黒ネコ・ウィリーが混ざっていた。化けネコどうしの殺傷はご法度。一体どいつがネコなんだ!?食われたくないなら、頭を絞れ! (裏表紙引用)

 

 

不勉強ながら全く知らない作家さんだったのだが、beckさんが先日紹介されていた記事を読んで興味を持ったので読んでみた。解説が麻耶さんだというのも大きい。

 

内容は、なるほど麻耶さんがお薦めしそうな変わった趣の本格ミステリーだった。だって猫が主人公なんだもん。猫が語り手だったり探偵だったりするミステリーは既に存在していても、本書と異なる点はきっと大きい。本書では、猫の世界――猫界の法律があったり価値観があったりと、猫界ならではのルールが明確にあるのだ。例えば、猫を殺してはいけないとか飼い主のいる猫には権限があるとか人間に化ける場合の条件とかが定義づけられている。

 

母体には皆様ご存知「注文の多い料理店」があると思う。(思う、と言うか、ある。引用されているので。)語り手であるウィリーの飼い主・狼森(ではないのだが世話をしてもらってる)が、人肉ミンチ工場長が仕込んだコテージにまんまとおびき寄せられ、ウィリーは人間に化けてそれを阻止しようとするのだが・・・という内容。猫たちには、どの人間がウィリーなのか分からない。ここで生きてくるのが、前述した「猫を殺してはいけない」という縛りなのだ。果たしてウィリーはプルートたちの魔の手から狼森を救えるのか。

 

大仰なトリックや大胆な仕掛けがあるわけではないが、1つ1つの謎解きはきっちり本格していて楽しめた。このまま銃撃戦で終わったらどうしようかと思ったが(笑)。他の作品もあるようなので読んでみたいと思う。