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夢を売る男  (ねこ3匹)

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輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は「いつもの提案」を持ちかける。「現代では、夢を見るには金がいるんだ」。牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。現代人のいびつな欲望を抉り出す、笑いと涙の傑作長編。(裏表紙引用)

 


百田氏3冊目。今まで読んだ本の中で1番軽い。約300ページほぼ一気読み。内容は、自費出版もどきの商売をしている出版社、「丸栄社」の編集長牛河原の奮闘記。章ごとに様々な「イタイ」お客様を登場させながら、牛河原の手腕を見せつけられ、出版社の実態や彼の主義主張が晒されていく。

 

登場する「本を出したい」お客様方はそれぞれ同工異曲で、まあ言えば完全に牛河原にバカにされている人種、いわゆるカモ。日本人は世界一自己表現をしたい、認められたい民族だというのは本当かもしれない。SNSやブログをやっている人への揶揄、売れない作家への挑発とも取れる内容が牛河原の口を借りてこれでもかと飛び出してくる。百田氏とおぼしき人物が貶める対象として登場するあたり、批判を恐れたかな。

 

まあしかし全てを真に受けず、コメディとして読むことをおすすめする。あまりにも人物造形が滑稽だから。ところどころ、そうかな?と思える記述もあるにはあるし。例えば「生前売れなかった作家が死後売れるケースは皆無」という台詞。宮沢賢治はそれに当てはまるが。個人的にはラストでいい話に持っていかれたのが脱力。牛河原はとことんイヤな奴を貫いて欲しかった。