すべてが猫になる

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微笑む人  (ねこ2.5匹)

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エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は事件をノンフィクションにまとめるべく取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で、不審死を遂げた人物が他にもいることが判明し…。戦慄のラストに驚愕必至!ミステリーの常識を超えた衝撃作、待望の文庫化。(裏表紙引用)

 


貫井さんの文庫新刊。「僕のミステリーの最高到達点」……。「戦慄のラスト」……。「衝撃作」……。


………そうかあ??( ̄▽ ̄;

 

貫井さんの描く、ノンフィクションの体裁を取ったミステリー。誰からも好かれる人格者、仁藤は本当に「本が増えて家が手狭になった」というバカな理由で妻子を殺したのか?がテーマとなっている。小説家である語り手が、仁藤の人となりを調べるために同僚や友人、かつての隣人など、様々な人にインタビューしたり、仁藤の知人らが話し合いをしたりと飽きさせない構成。いつでも微笑みを絶やさず、争いを好まない優秀な男がいかに実は狡猾で冷酷な男だったかが暴き出されるのかと思ったが。。。さんざん面白く読ませておいてナンダコリャ( ̄◇ ̄;

 

確かに、他人を理解することは出来ないという根源的なところを突いた良作であるとも言える。が、しかし、小説としては成立していないと思う。そもそも、動機が不可解な犯罪=現代的であるという点を狙いにするには仁藤の人物造形はあまりにも作りすぎに感じた。例えば現実に起きている無差別殺人や誘拐殺人の問題って、こういうことではないんじゃないの・・・?あれはあれで社会的な問題や現代に巣食う病魔を燻り出しているとは思うが、仁藤のケースは「他人を完全に理解出来ない」という以前の代物なような。どうもそこが私には馴染めなすぎて、「考えさせられる」なんていう立派な感想には至らなかったなあ。

 

まあ、貫井作品には時々こういうのあるからね。常に挑戦しようとする作家さんだからその姿勢には拍手。