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その可能性はすでに考えた  (ねこ4.2匹)

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井上真偽著。講談社ノベルス

 

かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、青髪の探偵・上笠丞と相棒のフーリンのもとを訪れる。彼女の中に眠る、不可思議な記憶。それは、ともに暮らした少年が首を斬り落とされながらも、少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった。首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇蹟の正体とは…!?探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証する!! (裏表紙引用)

 

 

ふおおお、好みど真ん中だった!(*゚∀゚*)
実は、ランキング本に載る前から本屋で目をつけていて(麻耶さん推薦だし)購入していたのだ。さっさと読んどきゃ良かった。これがデビュー作ではなかったが…シリーズ第二弾ではなかった、ホッ。

 

完全な本格ミステリーの変格版なので、ストーリーはあってないようなものだと割り切りながら読んだが、シリーズものならではの、キャラクターの状況説明を全て明かしていないスタイルのものであることを除けば概ね及第点以上ではなかろうか。閉塞された宗教団体内で起きた不可能犯罪の解決が物語のベースとなっており、その謎を「問題」として推理合戦を繰り広げるという構成。次々と探偵に推理を挑む人物が入れ替わり、勝ち抜き戦の様相を呈している。推理にはそれぞれ穴があるのかもしれないし、絶対的な証明には至っていない点がマイナスだろうか。

 

本格ミステリーとしてのオリジナリティはクリアしているとして、さてキャラクターのほうはどうか。これがまた、本ミスにキャラ萌え要素を求める私のような読者にはうってつけだった。イラストで見る分にはイケメンの主人公、「上苙丞(うえおろ・じょう)」は奇蹟の証明にこだわる探偵だ。彼は深い思考に入った時に、白手袋をはめた右手で片側を覆い、逆の片目を開ける。「ブラウンスタディ」と呼ぶこのお約束のスタイルは、片目は見えざるものを捉えるため、片目は不要なものを見ないために行われる。そして決めゼリフはそう、「その可能性は、すでに考えた」――。か、か、カッケー!!(笑)

 

私は、ワトスン的役割であるフーリンが気に入った。ツッコミ役なのだが、精神的に安定していないウエオロのいいアドバイザーとなっている。実はウエオロはこのフーリンに多額の借金があるのだけどね^^;第二の対戦相手、リーシーが妖艶で素敵だったなー!!この章が香港映画みたいで1番好き。

 

そしてもう一つの大きな特徴は、度々出てくる難読漢字や中国語。これ、ダメな人はダメかも。設定としても様式美としても必要かと思うので、これはまあ好み。ちょこちょこギャグも挟まれるし。新本格メフィスト系がお好きな人なら試す価値あるんじゃないかな。もっと言うと、麻耶さんはもちろん、まほろやこるものがお好きな人にもいいかもしれない。そうじゃない人は要注意。この作品、かなり読む人を選びます。