すべてが猫になる

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終点のあの子  (ねこ3.8匹)

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柚木麻子著。文春文庫。

 

プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。(裏表紙引用)

 


最近お気に入りナンバーワンの柚木さんの短篇集。四篇から成る連作短篇集となっており、主人公が章によって変わる。

 

「フォーゲットミー、ノットブルー」
平凡な女の子・希代子が、そうではない雰囲気をまとった朱里に憧れるお話。友だちになった途端、剥がれてしまうその子の化けの皮。なんかもう、めっちゃわかる。私自身はどちらのタイプでもなかったが、女子が女子を苛めるようになる感情の流れが逐一細かく描かれていて「そうそう、女ってどこでもこうなんだよなあ」と首を縦に振ること多数。

 

「甘夏」
冴えない女の子が、夏休みに自分を変えようと決意して始めた市民プールでのアルバイト。私も女子高だったから、「男子と会話する」ことがどれほど大事件だったかは知っている。今思うと、必死すぎてカッコ悪いな。周りを引き上げることで自分の価値を上げたがる女子。このタイプは大人でも普通にいるけどね。それにしても、出てくる大学生の男子もそれ以上にカッコ悪い。猿か。

 

「ふたりでいるのに無言で読書」
クラスの皆の憧れ、恭子が偶然図書館で会ったのはクラス一ダサいグループにいる文系女子だった。2人は1つの本から急接近し。。。この年代って、1番物事に影響を受けやすいし、吸収力が凄いと思う。恭子が友だちになった彼女は一生の宝物となるべきなのに、この展開。ムカつくというより、悲しい。人の目を気にしすぎるのもダメだけど、気にしなさすぎるのもな。。。

 

オイスターベイビー」
1話で登場した変わり者の朱里が、大学生となって再登場する。うっ、本質的にあまり変わっていない・・・^^;人を見下す行為はこの年代なら誰でも心当たりがあるのかなあ。自分だけは特別人と違うことを考えているみたいな。オリジナリティと伝えたい心がなければ、所詮はハリボテだと思うよ。でも朱里が心を入れ替えて良かった。自分の悪いところをハッキリ言ってくれる友だちって貴重だからね。大人になると素でほっとかれるよ。


以上。
いわゆる流行りの’イヤミス'系よりよっぽど女の内面をえぐってくる作家さんだと思う。登場人物の言動に共感するか、好きであるかどうかを評価の基準にするも良し、イヤイヤそれ以前に心理描写の巧みさを奨励すべきだと語るも良し、面白いことに変わりはない。