すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

残り全部バケーション  (ねこ3.8匹)

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当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。(裏表紙引用)

 

 

伊坂さんの文庫新刊。

 

伊坂さんの作品はいつもタイトルが素敵なものが多いけれど、これも例外ではない。もうタイトルだけで一目惚れ。自分の座右の銘にしたいぐらい。

 

本作は連作短篇集のような体裁を取っているが、私は長編として読んだ。伊坂世界はいつもファンタジーで、とぼけていて、だけど時々刺すような言葉もくれる。悪人を主人公に据えることも多く、その毒の部分が一見この平和ボケのような世界観を中和してくれる。

 

メインの登場人物は裏稼業で生計を立てている溝口と岡田だが、章ごとに時系列が前後し、彼らに関わる様々な人々の物語が綴られている。息子や妻を虐待する男や浮気が原因で離婚させられることになった父親などが登場し、岡田や溝口の仕事と絡んで絶妙な着地をみせる様々な物語に夢中になった。食べ歩きブログのサキさんや焼肉屋のメルマガ?など、何気ないものも絶対伊坂さんなら最後に繋げてくる!と信じていたらやはりそうなった。なにこの伊坂さんへの信頼。

 

裏稼業同士の友情なんて、と思うなかれ。伊坂世界の大きな冗談の全てが人としてあるべき真実を教えてくれる。