すべてが猫になる

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ロードサイド・クロス/Roadside Crosses (ねこ4匹)

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路傍に立てられた死者を弔う十字架―刻まれた死の日付は明日。そして問題の日、十字架に名の刻まれた女子高生が命を狙われ、九死に一生を得た。事件は連続殺人未遂に発展。被害者はいずれもネットいじめに加担しており、いじめを受けた少年は失踪していた。尋問の天才キャサリン・ダンスは少年の行方を追うが…。大好評シリーズ第二作。(上巻裏表紙引用)

 


リンカーン・ライムシリーズでゲスト出演した'尋問の天才'・キャサリン・ダンスシリーズの第2弾。今回もダンスのキネシクスの能力は余すところなく発揮されていて楽しめる。話し方やボディランゲージ、その一つ一つから見事に対象者の嘘を見抜く姿は、ライムの科学捜査とは対極にある。もう一つライムシリーズとの大きな違いがあるとすれば、犯人像だろう。ライムものの悪役が孤高の魔法使いであることに対し、こちらに登場する犯人はあくまで「普通」から逸脱してしまった「普通」の犯罪者の成れの果てだということだ。そういう違いから、読者は本家とは別の楽しみ方をこのシリーズに見い出せるのではないかと思う。

 

インターネットに端を発した事件というのは興味深い。ブログやSNS、ゲームなどなど、依存者は様々な居場所をそこに作りあげる。中には現実世界との区別がハッキリせず、ネットの中の世界だけが全てだと思い込む。そしてその価値観が現実世界へ飛び出した時に悲劇は起こるのだ。私もネットを愛用している人間の一人だが、ネットに書いてある記事や意見を鵜呑みにする人のなんと多いことか。それで他人を攻撃するなんてもってのほか。個人的には「美容院に置いてある雑誌」感覚で読んだほうがいいものもたくさんあると思っているんだがなあ。

 

本書は中盤まではやや冗長だが、やはり後半のどんでん返し二連発はさすが。まさかディーヴァーがこのまんまの真相というわけはなかろう、と思ってはいてもまたやられてしまった。ダンスが自分のこととなると能力を発揮出来ない姿を見ると、やはり彼女も一人の人間なのだと痛感する。失敗もするし悩みもするダンスのもう一つの魅力に親近感を持ち読者はますます彼女が好きになるんだろう。

 

ちなみに本書下巻には「ジェフリー・ディーヴァー日本放浪記」が収録されていてお得。児玉清さんとのエピソードあり。ディーヴァーは日本が本当にお好きのようで、お寿司も自分で握るのだそう。イクラを箸で自慢げにつまみあげるディーヴァーが微笑ましい^^。