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夜の床屋  (ねこ3.5匹)

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沢村浩輔著。創元推理文庫

 

慣れない山道に迷い、無人駅での一泊を余儀なくされた大学生の佐倉と高瀬。だが深夜、高瀬は駅前の理髪店に明かりがともっていることに気がつく。好奇心に駆られた高瀬が、佐倉の制止も聞かず店の扉を開けると…。第4回ミステリーズ!新人賞受賞作の「夜の床屋」をはじめ、奇妙な事件に予想外の結末が待ち受ける全7編を収録。新鋭による不可思議でチャーミングな連作短篇集。(裏表紙引用)

 


初読みの作家さん。やたらとプッシュされていたのと、色々好みっぽかったので挑戦。

 

7編収録の短編集。しかしこれは、「連作」ではないのかな?と思いながら読み続けた。「夜の床屋」は怪奇ものとミステリーが融合した物語で、洗練された静かな雰囲気が風情を感じる。お、これは好みだぞ。と思いながら次へ。「空飛ぶ絨毯」は謎は幻想的ながら、ベッドの下から消えた絨毯の行方を解き明かすというミステリー。次の「ドッペルゲンガーを探しにいこう」はまるで少年探偵団もののような作りで、少年たちと共にドッペルゲンガーを探しに行く主人公のお話。

 

このあたりまで来ると、ちょっとしんどくなってきた。ミステリーとしての論理の説得力が薄い上に、絨毯の謎語りも少年との冒険も、出だしが唐突すぎて入り込めないのだ。まあ、それでもまあ好みは好みだからいいや。と思いながら次へ。

 

「葡萄荘のミラージュⅠ」「葡萄荘のミラージュⅡ」は、ある洋館の主が残した奇妙な遺言から、洋館に隠された宝物を見つけようとするお話。洋館に集まるたくさんの猫や書斎のシャンデリアの位置など、謎や設定は良かったのだが。話が随分と有り得ない方向へ飛躍してしまい、ミステリーだと思って読んでいた自分は目が点。続く作中作からのエピローグでさらに真顔になる私。

 

「全ての作品が最後に繋がる」形式のものはありふれているが、本書のそれに関しては他のそれとかなり違いを感じる。どの作品も別世界を描いているが登場人物は重複しており、なのに続いているというよりはパラレルワールドのようだ。その数々を繋げるのはムリがあるのではないだろうか。幻想的な世界観へと視界を広げるのは歓迎だが、正直これではちょっとよく分からない。


かと言って、気に入らなかったのかと言われるとそうでもない。独特のドリーミーな雰囲気は確かに好きだ。でも私はもっと標準的を求めていたんだなあ。