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特捜部Q ーPからのメッセージー/Flaskepost Fra P (ねこ4.3匹)

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ユッシ・エーズラ・オールスン著。吉田薫・福原美穂子訳。ハヤカワ文庫。

 

その手紙は、ビンに収められたまま何年間も海中にあり、引き揚げられてからもすっかり忘れ去られていた。だがスコットランド警察からはるばる特捜部Qへとその手紙が届いた時、捜査の歯車が動き出す。手紙の冒頭には悲痛な叫びが記されていたのだ。「助けて」いまひとつ乗り気でないカールをよそに、二人の助手アサドとローセは判読不明のメッセージに取り組む。やがておぼろげながら、恐るべき犯罪の存在が明らかに…。(上巻裏表紙引用)

 

 

カール・マークシリーズ第3弾。やっと作者名を覚えた^^;
あー面白かった!ひー面白かった!2作目の「キジ殺し」が一気に普通になってしまったので恐る恐るだったが、この3作目はノンストップ怒涛の読み応え。シリーズ1番じゃないかな。

 

今回の事件は、数年前に起きた誘拐殺人が発端。被害者が死ぬ思いでスコットランドから流した血のボトルメールが、年月をかけてはるばるカールのデスクまで流れついた!手紙の文字はほとんど経年の湿気で消えており、差出人の頭文字が「P」ということぐらいしかわからない。そんな状態から、特捜部Qが内容を解き明かそうとする流れといい、わずかな手がかりからカールの助手たちが手紙を解読していくくだりといい、見事としか言いようがない。

 

さらに視点は犯人、その妻、被害者と目まぐるしく変わる。特に犯人の妻が、束縛する夫から逃れようとするあたりは本当に手に汗握る。よりによって、浮気までしてるし(この場合、批判はしない、てか出来ない。読めばわかる。)子どもがいるから簡単に逃げるというわけにもいかない。このあたり、ちょっとぐらい被害者が鈍いぐらいのほうが緊迫感が増すのだ。

 

犯人の過去として描かれる、宗教による洗脳、父親の独裁的な教育、それらの恐怖も犯人の人間性を想像するに難くない要素だ。宗教を完全否定するわけではないが、文化の違いだけとは言えない異常さ、子は親を選べない運命などなど、描かれるメッセージは複雑化している。

 

そして、そんな重い物語に対し骨休め的な役割を果たしているのが、カールの助手であるローセとアサドの存在の大きさ、愉快さだろう。上司の言うことをまったく聞かないローセが出勤拒否(笑)。代わりにやって来たローセの双子の姉ユアサのキャラの濃さ。相変わらず何者か分からないアサド。この2人の存在なくてはここまで愛されるシリーズにはならなかっただろうな。

 

まあ科学捜査ものほど最先端ではないし、人物の掘り下げ、推理が突出しているわけではないが。個人的には今お気に入りの海外ミステリーと言えばもうディーヴァー、ルメートル、そしてこのシリーズだな。

 

もう第4弾が文庫化しているので早めに読みたい~。