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強欲な羊  (ねこ3.8匹)

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美輪和音著。創元推理文庫

 

美しい姉妹が暮らすとある屋敷にやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた陰湿で邪悪な事件の数々。年々エスカレートし、ついには妹が姉を殺害してしまうが―。その物語を滔々と語る「わたくし」の驚きの真意とは?圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。企みと悪意に満ちた、五編収録の連作集。(裏表紙引用)

 


本屋で見て気になった作家さん。表紙とタイトルで好みっぽいなーと思って。内容は5編収録の短編集で、ちょっとホラーテイスト+本格謎解きというジャンル。

 

「強欲な羊」
屋敷で暮らす美人姉妹の片方が片方を毒殺。屋敷の女中が語る事件の真相とは何か。果たして「強欲な羊」は性格のキツい姉ほうか優しく病弱な妹のほうか――。こういうのはよくある「実はそう見えないほうが悪でした」オチを期待してしまうが、それだけじゃつまらない。この物語の、さらにひとひねりある真相には驚いた。

 

「背徳の羊」
二卵性双生児の我が子。自分とまったく似ていない息子が、友人の息子と瓜二つだったら…。一見貞淑な妻は背徳の羊なのか――。これも「実は浮気でした」オチで済むわけがない。それにしても夫、もうそこまでやってしまったら間違いでも何でも元には戻れないよ。ゾクっとする女の顔の裏側が恐ろしいお話。

 

「眠れぬ夜の羊」
コンビニ店で働く塔子は母と2人暮らし。愛する男性を友人に取られた過去がある塔子は、友人を公園で殺害する夢を見る――。殺人事件ともう一つのある謎が絡み合い複雑な真相。ホラーテイストが強い作品。

 

ストックホルムの羊」
王子に献身的に尽くす4人の女中。ある日マリアという女が奉公にあがって来てから、全ての歯車が狂い始めた――。舞台を海外へ移し、女中たちの独白形式で進む物語。女の嫉妬と男の独占欲がとても醜い。このお話の真相が1番ビックリ。笑ってしまったぐらい。この作家の作風を1番よく表わせているかも。

 

「生贄の羊」
酔っ払って意識を失っていた女が、気が付くと公衆トイレに繋がれていた。そして隣の個室、そのまた隣の個室にも別の女が閉じ込められているようで――。姿が見えない同士の会話で謎を解き明かしていく物語。よくある「全ての物語が最後に繋がる」ヤツなんだけど、個人的にはややこしいので好きではないのであった。


以上。作風はホラーと謎解きの融合。そしてイヤミスの要素も。こう言うと苦手意識を植え付けてしまうかもしれないが、雰囲気が耽美なので読みやすいと思う。少なくともドロドロしていて読むのがキツい、ってことはない。またお気に入りの作家さん見つけたかな~、と思ったが、角川ホラーで出てるほうの作品はイマイチっぽそうなんだよね^^;どうしようかな。