すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

漁港の肉子ちゃん  (ねこ3.8匹)

イメージ 1

 

男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。 (裏表紙引用)

 


西さん2冊目。前に読んだのがエッセイだから、実質的には初めて触れる西小説ということになる。タイトルにビックリして思わず選んでしまったのだが、そのインパクトそのままの「凄い」小説だった。

 

東北の(どこかはあとがきで明らかになる)ある街が舞台。男を見る目がなさすぎて、娘のキクりんを連れてあっちこっちフラフラして生きてきた肉子ちゃん。本名は菊子なのだが、見た目が肉肉しいとかそんな理由でそれがあだ名となった。毎日あるがままに生きて、いびきもうるさくて、センスが絶望的に悪くて、訳のわからない言葉を毎日全力でわめき散らす38歳。親がダメだと子供はしっかりする、とはよく言うが、娘のキクりんはそんな肉子ちゃんが恥ずかしい。でも、下に見たりバカにしてるわけではないのは伝わるな。クラスの派閥に巻き込まれてハッキリ言えないところもあったり、決断力のないキクりんだけど、いい子だな。

 

実は、あまりの肉子ちゃんの勢いと句点の多さと方言の強さに最初は目が滑っていたのだが(とにかく「目が非と書いて罪と読むのやからっ!」シリーズがムカつく、笑)――キクりんの出生の秘密が明らかになったあたりからは単なるドタバタ小説ではないことがわかった。その秘密もあまりにもあんまりだから、感動したりはしなかったが、なんとまあ凄い生命力なんだろうと感心しきり。
「生きてるなあ」「ここにいるなあ」という実感を言葉で強く感じたかったらコレがピッタリなのではないかな。肉子ちゃん、好きじゃないけど自分の周りに居ないでさえいてくれたら面白い人だと思うよ。


どの作品もこういう疲れるキャラクターばかりだったらしんどいけど、どうなんだろう。一応色々読んでみようとは思う作家さんなのだが。