すべてが猫になる

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ファイアボール・ブルース  (ねこ3.7匹)

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桐野夏生著。文春文庫。

 

ファイアボール」と呼ばれる女子プロレス界きっての強者・火渡抄子といまだに一勝もできない付き人の近田は、外人選手の失踪事件に巻き込まれる。新人のリンチ事件、事務所の独立問題……トラブル続出の中、後楽園ホールの試合が近づいてくる。女子プロレス界に渦巻く陰謀と女の荒ぶる魂を描く長篇ミステリー。(裏表紙引用)

 


桐野さんのプロレスミステリ第1弾。
読破しようかな、と思っている作家だと興味の薄い分野でも読まなくちゃいけないみたいな「お付き合い」の気持ちで手に取った本。とは言え、こう見えても(どう)私はキン肉マンが大好きなのでそれほど抵抗はないのであった。それほどプロレスに興味がなくても読めるように、自己満足ではない描き方で描かれているので読みやすい。

 

読みやすいことの一因は、キャラクターの魅力に尽きると思う。語り手の近田は弱いし自己の確立が出来ていない感があるのでそれほどだがまあ特殊世界の語り手にはふさわしい。魅力と言ったのはもちろん「ファイアボール」の異名を持つ人気・実力・人間性を兼ね揃えた火渡さんのことだ。他者におもねない姿がカッコイイね。つるまないし、かと言って一匹狼気取るでもないし。頭もいいし。

 

ミステリ的にはこれは本当に桐野作品なのかと疑うほどライトだし、息苦しさも重さもない。この世界のことを分かった気になれるほど長くもないので、軽く読む分にはちょっとした拾い物だったと思う。読む前は「2もあるのかよ…(;^ω^)」と思っていたが、読後にはこれは是非続きを読まなければと思うほどにはテンション上がった。と、言いながらなかなか読まないんだろうけど。