すべてが猫になる

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奇談蒐集家  (ねこ3.7匹)

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自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。―新聞の募集広告を目にして酒場を訪れた客は、奇談蒐集家を名乗る男と美貌の助手に、怪奇と謎に満ちた体験談を披露する。鏡に宿る美しい姫君との恋、運命を予見できる魔術師との出会い…。しかし、不可思議な謎は、助手によって見事なまでに解き明かされてしまう。安楽椅子探偵の推理が冴える、連作短編集。(裏表紙引用)

 

 

太田さんの奇談系短篇集。ある夜の街でひっそり営まれるバー、新聞に掲載される「奇談求む」の広告、酒と煙草と奇談を愛する店の主人と謎の美青年助手。持って来られる奇談の内容は、自分の影に刺された男、古道具屋の鏡に映った江戸の姫様、薔薇園で出会った美しい主人、公園に潜む夜の子ども――などなど、現実では信じられないようなものばかり。しかし、奇談に喜ぶ主人を冷静に見つめる助手の氷坂がこれは奇談などではない、と論理的にこれは現実の話であるとあっさり謎を解いてしまうというのがお決まりのパターン。

 

その謎解き自体は膝を打つような面白いものでもないのだが、お店とキャラクターの雰囲気勝ちだろうと思う。最後に実はあの店は――とやる展開も作者のオリジナルではないし、「よくあるこういうものが描きたかった」まさにそのままをやりましたという感じ。しかしその奇談を現実に引き戻した時に見える人間関係の機微に感情移入出来れば読書に求める満足感は得られるかと。個人的には読みやすく大変好みだった。